持って来た絵をローテーブルの上に置いて、3人掛けのソファの端にはまり込むように座ると、やわらかな座面に腰が沈む。
この家のソファは、外国製で、サイズが大きめな上にやたらクッション性が高く、座ると体が沈み込む。 座面の硬いソファの方が好みな拓としては、あまり好きではない。
その上、床から座面までの高さも日本製の物より高く、小柄な拓が座ると体が沈む分足が上がり、若干 床から浮いてしまうので座りずらいコトこの上ない。
だから、拓は このソファに座る時は、いつも背面と肘掛の作るコーナーに、体を丸めてはまり込み膝を抱えるようにするのだった。
「……」
ソファに体を預けると、連日 絵を描くために睡眠時間を削っていたせいか、急に瞼が重くなって来て、拓はあくびを噛み殺した。
いつもは煩わしいソファの沈み具合が、今日はやけに心地よく、拓はいつしか肘掛を枕にまどろみ始めていた。
××××××××××××××××××××××××××××××
ふと、違和感を感じて目を覚ます。
拓は、今 自分がどこで、どういう状況下にいるのか理解できずに、ぼんやりと宙を眺めた。
(えぇっと…俺、何してたんだっけ……)
覚醒しきらない頭のまま宙を見続けていると、視界の端に人影が写った。
寝惚けていたのかもしれない。
何故そんな風に思ったのか 拓自身 後になってもよく分らないのだけれど、それはふと口を吐いて出た。
「…香月?」
途端に頬を軽くはたかれ、その衝撃と僅かな痛みで、目が覚めた。
「あ、雄一……」
不味い…。
拓を見下ろす雄一は眉を顰め、明らかに不機嫌だった。
とっさに拓が 深い意味の無い言葉だというコトを口にしようとしたのと、雄一が絞り出すような怒りを抑えた声で口を開いたのは、ほぼ同時だった。
「ガズキって、誰だ?」
「いや、俺、寝惚けて――」
お互いの発した言葉が被ったコトで、二人は また同じように言葉を切った。