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□『 「会うは別れの始め」と言うけれど …』
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 昨夜、オトンは俺に離婚すると言った後、伯母夫婦のいる東京に戻るオカンに着いて行ってやって欲しいと、言った。 あまりにも突然のコトに言葉も出ない程驚いたけれど、それ以上に、頭に来た。
 自分が幸せにできなかった女を息子の俺に託すなんて、責任転嫁もいーとこだと思ったからだ。
 それでも、どちらかと言うと繊細で、情緒不安定気味なオカンを一人で東京に行かすわけにもいかず、俺は自分の意志で東京に行くコトを決めたんだ。
 ただ、小学校からの親友で、いつも一緒だった恭平と もう会えないという事実だけは、受け入れがたいものがあった。

「お前だけ、残るとかでけへんのか?」

「つか、オトンはこっちに残んねん。 俺とオカンだけ…」

「おばさんに着いて行くちゅうことか?」

「せや…」

 二人の間に何度目かの沈黙が降りる。
 その重さに耐えきれずに、もう一度視線を街並みに向けると、河川敷の堤防道路をランニングする うちのヘタレ野球部の姿が目に留まった。
 同中の奴らが何人かいるから、試合の度に 応援半分、からかい半分で、恭平と一緒に見に行ったりしたのを思い出す。

「野球部の試合、よう見に行ったな…」

 いつの間にか、俺の横に立った恭平が同じように 走って行く野球部を見てポツリと言ったから、俺は野球部を目で追い、見送りながら短く返事をした。

「せやな」

「もう、一緒に行かれへんのやな?」

「せやな…」

「一緒に登下校も、でけへんのやな?」

「…せやな…」

「駅前のおばちゃんトコの お好みも一緒に食われへんのやな?」

「もう! 何やねん、お前 さっきから! 俺かて淋しいねん、でけへん でけへんばっか言いなや!」

 隣に立つ恭平の、はだけた学ランの胸の辺りを掴むと、身長差に少し見あげる恰好になりながらもグイッと引き寄せる。
 恭平の言葉に、ずっと我慢していた淋しいという想いが一気にあふれ出し、激しい感情となって俺を怒鳴らせたのだけれど、意外にも当の恭平は優しげに微笑んで俺を見下ろしていた。

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