つか、あんなの真に受けてたのか?
え? それって拗ねてるってコトなんだろうか?
そう思った途端、目の前のデッカイ孝輔が妙に可愛く見えて来た。
「バッカだな…あんなの言葉のあやだろ? もしかして気にしてたのか?」
「アホ。 気にしてねーわ」
そっぽを向いて歩き続ける孝輔は「本当は気にしてました」候で、俺は笑いを堪えながら その隣に並んで歩く。
普段はあんなに感情が読み取りづらい孝輔なのに、時々こんな風に感情が剥き出しになるのは大抵 やきもち焼いたり、拗ねてる時で、いつもの俺様ぶりからは想像もつかない可愛い一面は、俺の保護本能を大いにくすぐってくれる。
だから、こんな風に些細な事で拗ねられたりすると、孝輔の頭を無性にイイ子、イイ子してあげたくなるけど、実際にやったら怒りそうだから止めておこう。
「あのな…」
歩きながら、孝輔がポツリと言った。
「何?」
「弁当のことだけど…無理しなくていーんだぞ? 俺は別に手作り弁当にこだわってたわけじゃないんだ。 ただ…ラブラブモードはあり得ないって言われたのが結構堪えてさ、奏多が俺のために何かしてくれるのなら、何でもいいからして欲しくなっただけなんだ……って、俺 カッコ悪ぃなぁ…」
孝輔は、どうして俺のこととなると、こんなに自信無さ気になるんだろう?
「ちゃんと作るよ」
そう言って、俺は辺りを見回した。
ここは、昇降口手前の通路で時間帯によっては人が多いところだけど、今は俺達以外に誰もいない。
俺は、孝輔の腕を掴むとグイッと柱の陰に引っ張り込んで、片方の腕を孝輔の首に掛けるように回して、その唇に自分の唇をギュッと押し付けた。 腕で孝輔を引き寄せるようにした上で、めいっぱい背伸びをしないと届かないのが、悔しい。
「俺の一言を気にしてたみてーだから、お詫び。 言っとくけど、学校でなんて特別だかんな!」
孝輔は驚いたように目を見開いていたけど、しばらくしたらフッと笑った。
「なんか、すげー嬉しい。 ありがとな」
嬉しそうに笑う孝輔を見て、急に俺が恥かしくなってきて、どんどん顔が赤くなってくる。
照れ隠しに、下駄箱から乱暴に靴を取りし出すと、孝輔に向かって言った。
「その代わりと言っちゃなんだけど……弁当の作り方教えて」