香月が、何故 伊達メガネだと知っているのかも判明したことだし、拓は無言のままメガネを取り、掛ける。 ほんの少し 自分のそそっかしさに頬が赤くなりそうになりながら。
「やっぱ 拓ちゃんは、見た目も中身も可愛いな」
「だからっ! 可愛いってゆーなっ」
「そうやって、すぐムキになるから 余計 可愛く見えるんだって」
だんだんヒートアップして行く拓に対して、香月は至ってフツーに落ち着き払っていて、これではホントにどちらが年上が判らないではないか とハタと気づき、気持ちを落ち着けようとぬるくなったコーヒーを飲んだ。
カップを下ろすと、真ん前に座る香月は 一体何が気になるのか、キョロキョロと辺りを見回している。
「で? 何をキョロキョロしてるのか知らないけど、お前は何をしに来たんだ?」
拓の言葉で思い出したように、香月は拓の方を向き直って言った。
「あ、そうだ。 写メを削除する条件を言いに来たんだった」
忘れてたのかよ!っと、思わずツッコミたくなるのを我慢する。
「いろいろ考えたんだけどさ〜」
ズイっと、息がかかりそうなくらいの至近距離まで顔を寄せられて、拓は思わず体を引いた。 それを見た香月の口許が僅かに笑ったような気がして、拓は無意識の自分の行動に後悔した。
(なんだよ。 これじゃ、コイツにビビってるみたいじゃないかっ!)
「ホントいろいろ考えてさ、ほら、俺って健康な10代男子だから? ちょっとエロ系なコト中心で――」
「エロ系? な、なんだよ、それ! そんな変なコトは聞けないぞ!」
「って、思ったんだけどぉ、やっぱ止めた」
「……」
からかわれたらしい。
動揺した自分が悔しかった。
「大丈夫、難しいコトは考えてないから」
そう言って笑う香月の笑顔は爽やか過ぎて、拓には返って胡散臭く見える。