Novel Library

□『 すくーる でいず 〜シナモンとネクタイ〜 』 B
3ページ/5ページ


 香月が、何故 伊達メガネだと知っているのかも判明したことだし、拓は無言のままメガネを取り、掛ける。 ほんの少し 自分のそそっかしさに頬が赤くなりそうになりながら。

「やっぱ 拓ちゃんは、見た目も中身も可愛いな」

「だからっ! 可愛いってゆーなっ」

「そうやって、すぐムキになるから 余計 可愛く見えるんだって」

 だんだんヒートアップして行く拓に対して、香月は至ってフツーに落ち着き払っていて、これではホントにどちらが年上が判らないではないか とハタと気づき、気持ちを落ち着けようとぬるくなったコーヒーを飲んだ。
 カップを下ろすと、真ん前に座る香月は 一体何が気になるのか、キョロキョロと辺りを見回している。

「で? 何をキョロキョロしてるのか知らないけど、お前は何をしに来たんだ?」

 拓の言葉で思い出したように、香月は拓の方を向き直って言った。

「あ、そうだ。 写メを削除する条件を言いに来たんだった」

 忘れてたのかよ!っと、思わずツッコミたくなるのを我慢する。

「いろいろ考えたんだけどさ〜」

 ズイっと、息がかかりそうなくらいの至近距離まで顔を寄せられて、拓は思わず体を引いた。 それを見た香月の口許が僅かに笑ったような気がして、拓は無意識の自分の行動に後悔した。

(なんだよ。 これじゃ、コイツにビビってるみたいじゃないかっ!)

「ホントいろいろ考えてさ、ほら、俺って健康な10代男子だから? ちょっとエロ系なコト中心で――」

「エロ系? な、なんだよ、それ! そんな変なコトは聞けないぞ!」

「って、思ったんだけどぉ、やっぱ止めた」

「……」

 からかわれたらしい。
 動揺した自分が悔しかった。

「大丈夫、難しいコトは考えてないから」

 そう言って笑う香月の笑顔は爽やか過ぎて、拓には返って胡散臭く見える。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]