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□『 さよならは朝の光の中で 2 』
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 目覚めた時、外はすっかり明るくなっていて、カーテン越しの朝の光が部屋の中を柔らかく照らしていた。
 その明るさは、昨夜の絶望にも似た不安や、悲しい気持ちを半減させてもまだ、有り余るほどに清々しく、温かい。
 気怠い体を起こそうとして、自分が先輩に包み込まれるように抱きしめられていたコトに気づく。
 先輩は、仕事に関しては容赦なく厳しいけど、それ以外では過保護なほどに俺に優しい。 涙腺も弱ければ、要領も悪く、一生懸命な割に空回りしてるから、どうにも放っておけない、と言われたコトがある。
 そうやって、ずっと俺を大切にしてくれてた。 だからこそ、俺は――

「…ん…何だ、もう起きてたのか……」

 ツと、その胸に体を寄せた俺の動きで目を覚ましたらしく、先輩の腕に力がこもり、緩く抱き寄せられる。
 あぁ、幸せだな……今なら、どんな話を聞かされても 平気かもしれない。 俺らしくも無く、前向きに話が聞けるかもしれない。笑顔で『さよなら』と言えるかも……

「先輩…異動の話、聞きました」

 俺の口からスルっと流れ出た言葉に、ピクリと先輩の指先が揺れたような気がする。

「正式発表前なのに、もう詢の耳にも入ってるのか?」

「偶然だけど……あのね、先輩…」

「ん?」

「俺、昨日 その話を聞いて、すごくショックで…悲しくて、全然受け入れられなかったんだけど…俺なりにね、考えて…考えてさ、やっと気持ちの整理ついたから……先輩、迷惑じゃなかったら、俺 ここで待ってていい? 」

「詢…?」

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