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□『 さよならは朝の光の中で 1 』
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 今日は金曜だから、このままでは話が聞けないまま土日を過ごすコトになる。 どちらかと言えばマイナス思考の俺としては、2日もあれば十分 ドン底まで落ちる自信があるから、できれば それは避けたい。

「帰り、何時頃になりそうですか?」

 スケジュール用のホワイトボードの自分の欄に「中岡(営) → 直帰」と書き込む先輩の後ろ姿に再び訊ねると「分んねーなぁ」と、また短い返事が返ってくる。
 
 資材部のドアを開け、廊下へ出て行く先輩に続いて俺も出て行く。
 エレベーターホールへ向かう先輩の背中に、どう話をきりだそうか迷っていると、突然 振り返った先輩に腕を取られ、非常階段へ続く扉へと押し込まれた。

「さっきから何なんだ、お前は?」

「え…と、だから…先輩に、話が……」

 声の感じからして、機嫌が悪くなり始めた先輩に、歯切れが悪くなる俺。

「その話は、急ぎなのか? すぐ、終わるのか?」

「急ぎではあるけど、すぐは終わらないかも…」

「じゃあ、後にしてくれ。 俺、急いでるんだって」

「はい…」

 先輩のちょっと冷たい口調に、鼻の奥がつんとして目にうっすらと涙がたまってくる。
 こんな大事な話なのに、後回しにされてるのが、堪らなく辛かった。 でも、先輩は俺が何の話をしようとしているのか知らないんだから仕方ない。
 すると、先輩は大きな手で、下を向く俺の後頭部をポンポンと叩いて言った。

「直帰だって言ったろ? 帰りに お前んちに寄るから…それで、いいか?」

「…うん」

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