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□『 TURNING POINT 5 』
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「なんで、そんなコト…聞くんだ?」

 逆に聞き返され、完全に逃げ場を失った俺に残された道は『開き直る』しかなかった。

「ごめん。お前とあの子が一緒にいるトコ…見たんだ」

「……」

「駅前のコーヒーショップから出てきたトコから…公園のトコまで…見た」

 孝輔にどう思われるだろうかと、考えると居たたまれない気がしたけれど、一旦開き直ってしまった以上、続けるしかない。

「…ずっと、ついて来てたのか?」

「ん…ごめん」

「お前、どこまで見てたんだ?……いや、付き合ってるのかって聞くくらいだから、だいたいの見当はつくけどな…」

 そこで、孝輔は言葉を切って、黙り込んでしまった。
 気まずい空気の中にいるコトが だんだん耐え切れなくなってきて、このまま帰ってしまおうかという考えが椅子から腰を浮かせたけれど、まだ何も聞いていない真実を聞きたい気持ちが、俺の動きを鈍らせる。
 小さな葛藤に判断をしかねていると、孝輔が短いため息をついた後、俺の名前を呼んだ。

「奏多、別に隠すようなコトでもないから話すけど、その代わりお前も後で、俺の質問に答えろよ?」

 真正面から俺を見据えてそう言った孝輔の顔に、何故かドキドキするモノを感じながら、俺は頷いた。

「吉井……アイツは、中学の時の部活の後輩で、今日、突然 あの店に呼び出されたんだ。 で、告られた」

 ドキリと心臓が大きな音を立てたような気がして、一瞬 体が強張った。
 そんな俺の様子に気づきもしないで(つーか、気づかれても困るんだけど…)、孝輔はサラサラと言葉を繋いでいく。

「中学の頃から吉井の気持ちは気づいていたし、あの大人しい奴が自分から告るなんて、かなり勇気がいっただろうと思ったけど…断った」

「………え?」

(今、断ったって聞こえたような気がする…?)

 思っていた言葉と真逆な言葉が耳に届いたために、すぐに意味を理解できずに聞き返すと、孝輔が眉を寄せて呆れたように言った。

「お前、ちゃんと起きてるか?」

 それには何も答えず、俺は孝輔に聞き返す。
 付き合っているとばかり思っていたのに、そうではないと判って、少し頭の中が混乱気味だったせいか、その問いかけの語尾になじる様な色があったコトに俺は気づかなかった。

 「でも…手、繋いでた…」

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