「なぁ、颯生…お前は、孝輔と奏多のコト気にならないのか?」
「そりゃ、気にならないと言ったら嘘になるけど…」
どちらも大切な友達だから、上手く行って欲しいと言う気持ちに嘘は無い。
でも、こればかりは当人同士の問題で、どんなに心配したって、自分達がしてあげられるコトなんて何もないのだと判っている。
けれど、修斗にしてみれば そうも行かないだろう。 自分の想い人が他の男に連れて行かれたのだから、内心穏やかではいられまい、ほんの少し前の孝輔のように…。
「まぁ、修斗も辛い所だろうけどさ、さっき抜けがけしたんだから、しばらくは孝輔に譲ってやれよ。大切な大切な奏多君を――」
「ハイ?」
ちょっと茶化してみた颯生に対して、修斗が素っ頓狂な声を上げた。
「……その言い方 何だか俺が、奏多のコト好きみたいに聞こえるんだけど?」
今更 何を、と思いながら颯生は眉を寄せた。
「そうなんだろ?」
颯生がそう言った途端、修斗はものすごく慌てだした。
奏多への恋心がバレたのが、そんなに恥かしいのだろうか? と、颯生は思った。
「ちょっ、ちょい待てっ! お前、ものすっごい勘違いしてないか?」
「えっ?」
颯生は、修斗の言っている意味が解らず、聞き返した。
すると、颯生の前に修斗の抱えていたクマが付き出され、短い前足がバイバイするように振られた。
「だーかーらっ、修斗は奏多のこと、好きじゃありませんよぉ。どうして、そんな話になるんですかぁ?」
「だって…奏多にゲイビ見せてたじゃないか!…って、何でクマ?」
「あれはぁ、ふざけただけですよぉ」
クマが答えた。
「だって、やたらと奏多に ちょっかいかけたり、触るじゃないかっ! 」
「それは、孝輔君に対する嫌がらせです」
再び、クマが答える。
「じゃあ、何で孝輔に嫌がらせするんだよ? 二人で奏多を取り合ってるからだろ?」
「だから、違うって!」
クマの後ろから修斗は顔を出して そう叫んだ後、ハッとしたように又、クマの後ろに隠れた。
明け透けで隠し事なんてするタイプではない修斗にしては、珍しくハッキリしない態度だったために、颯生もいつも通りに詰め寄ることができず つい遠慮がちになってしまい、修斗ではなく、クマに話しかけた。
「…何がどう違うのさ。ちゃんと解るように話してくれよ。俺、何 聞いても驚かないし、引かないから…な?…クマ…」
それは本当に本心からの言葉だった。
修斗とは長い付き合いで、ずっと世話を焼いて来て、ダメダメぶりだって散々見て来ているのだから、今更 並大抵のコトなんかでは驚かないという自信があった。
ややあって、クマの後ろから声がした。