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□『 真夏の夜に… 』 TURNING POINT 番外編 第1話
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 それでも中学へ上がる頃には、修斗にも多少の自覚が芽生えたのか、自然と身の回りの事もできるようなり、学校生活においても支障をきたす事は無くなっていった。 それに伴い、颯生もお役御免と行きそうなものなのに『執事』には、新たな仕事が待っていた。

 中学に入った頃から、二人の関係が、何がどうというわけではないけれど、ほんの少し変わったと颯生は思っていた。
 それは、ほんの些細な事で、例えば一緒に出掛ける機会が減ったとか、前ほど話が合わなくなったとか、その程度の事ではあったけれど、修斗が生活面において颯生の手を煩わさなくなった事に比べれば大した変化ではなかった。

 けれど、修斗の生活はガラリと変わった。
 突然、モテ始めたのだ。
 元々、西洋人めいた綺麗な顔立ちをしていて、ハッキリとした目鼻立ちは成長とともに男っぽさを損なわない程度に甘さが加わり、アイドルめいたその容貌に惹かれ、同級生、上級生はもちろん、近隣の中学や高校の生徒にまで告白されるといった事態になっていた。
 そして、修斗のマイペースで無頓着な性格は、ここでも遺憾なく発揮されることとなった。
 修斗は告白されるままに次々と、付き合う相手を変えて行き始めたのだ。
 そうなると当然のように、修斗の周りには妬みや嫉み等の普段はあまり接したくないような感情を持った女の子達でいっぱいになり、それらを処理することが『執事』の新しい仕事となった。

 つまり、修斗にフラれた女の子達の愚痴を聞かされたり、腹いせに八つ当たりされたり、中には颯生のせいで修斗と上手くいかなかったなとどと根拠のない逆恨みをする子まで出てきたりと、あり得ないようなとばっちりを受ける羽目になったのだった。
 ただ、子供の頃からの腐れ縁で面倒を見ているだけなのに、さすがにこのポジションは堪ったものではない。
 一度、腹に据えかねて『告られるままに次々と付き合ったりするんじゃない!』と、怒ったこともあるのだけれど、『付き合ってるうちに一番好きな子になるかもしれないだろ? まずは付き合ってみないとね〜』なとど、軽く返されて、もう、口を出すのは止めようと心に誓った。

 以来、修斗の恋愛にも生活にも関わらないように過ごして来た。
 それでも、腐れ縁は続いて中学3年間は同じ陸上部で、登下校は一緒、そして、それは同じ高校に進学してからも大して変わるコトは無かった。 時折、思い出したように面倒を見る羽目になったりするコトもあるけれど、最後には文句を言いながらも世話を焼しまうのは、結局の所、自分の性格なんだろうと受け入れているような状態だった。
 それに、そんなマイペースな修斗の世話をするのは 口で言うほど嫌ではないと颯生自身が気づいていて、この先、二人の関係は変わることなく こんな調子で続いていくのだろうと、そう思っていた。
 あの日までは…。

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