木下 修斗(きのした しゅうと)17歳
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岡田 颯生(おかだ さつき) 17歳
子供の頃からの腐れ縁。
手のかかる修斗の面倒を見続けて来た颯生と、来るもの拒まず 女たらしの修斗。
二人のターニング ポイント は、夏休みの『あの』旅行の夜だった。 TURNING POINT 番外編 第1弾 【R18】
『 真夏の夜に… 』
ふと、目が覚めた。
いつの間にか、眠っていたらしい。
夏休みの最終日。
この時期定番のツクツクホーシの鳴き声がなんとなく夏の終わりを感じさせながらも日中は相変わらずの猛暑で、巷で囁かれている節電が気にかかりながらも ついエアコンの設定温度を下げてしまう。
そのせいでエアコンの効いた部屋は、たった今まで眠っていた颯生(さつき)には適度な涼ではなく、肌寒く感じるくらいひんやりとした空気が充満していた。
(なんか、寒…)
タオルケットを手繰り寄せながら体を起こすと、すぐ脇で同じように寝入ってしまったらしい、修斗の姿が目に留まった。
(あーぁ、こんなカッコで…風邪ひくっての)
エアコンの設定温度を上げながら、手繰り寄せたタオルケットをそのまま修斗の上にバサリと掛けると、何やら不明瞭な寝言をいいながら寝返りを打ってこちらを向いた
長い睫毛が影を落とす修斗の寝顔を見ながら、颯生は思う。
(コイツ、子供の頃から寝顔変わんないよな…)
修斗とは、互いの母親同士が古くからの知り合いで、幼なじみとまではいかないものの小学生の頃から互いの家に頻繁に行き来する家族ぐるみの付き合いで、すでに10年来の“友達”だ。
昔から、お泊りっこや、一緒に昼寝などをさせられたから、互いの寝顔なんて嫌というほど見飽きている。
いや、正確には互いではなく、颯生は修斗の、と言うべきか。
昔から、修斗は一度眠ったら雷が落ちても気づかないくらい熟睡するタイプで、加えて寝相がすこぶる悪い。一緒に眠れば蹴飛ばされたり、布団を剥がれたりと、夜中に何度も起こされるのはいつも颯生で、その度に修斗の体を定位置に戻してやったり、布団を掛け直してやったりと面倒を見て来てやったのだ。
それだけではない。元々、小まめできちんとした性格の颯生と違い、修斗はマイペースで何事にも無頓着な自由人で、それ故、たびたび困ったコトに直面するのだけれど、如何せん本人がその状況を困ったと認識しないため、修斗の周りではいつも物事が滞る。
そうなると、誰かが手を貸し、尻拭いをしてやらなければ事が進まない。 その役目が颯生の担当だったのだ。
小学生の頃は、宿題然り、忘れ物然り、普通に学校生活が送れるよう、常に気にかけてやっていたし、うさぎや金魚の飼育当番などは、ほとんど颯生が2人分こなしたようなものだ。
そして、それがあまりにも完璧な世話だったために、颯生に付いたあだ名は『執事』だった。