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□『 TURNING POINT 1 』
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 一年以上も前の 懐かしい出来事を思い出しながら、冷蔵庫からペットボトルのジュースを2本取り出して 2階の自分の部屋に戻った。

「お待たせ。あ〜涼しい、生き返るわ」

「下、エアコン入れてないのか?」

寝ころんだままの孝輔にペットボトルを渡しながら答える。

「下、誰もいねーもん。うち、オトンは単身赴任中で、オカンは仕事で帰り遅いって知ってるだろ?」

「妹は? いるだろ?ミオちゃん、だったか」

 こんなデカくて厳つい男が、女(生意気な我が妹と言えど)のコトを“ちゃん付け”すると 正直 キモいな。
 ちょっと、笑い出したいのを堪えながら答える。

「あいつ、今年 受験だから塾に行き始めてさ、学校から直行。下手すりゃ、オカンより帰り 遅かったりすんだぜ」

「…ふーん。レベル高いとこ狙ってるわけだ。兄貴とはエラく差があるな」

「悪かったな!」

「怒るな、頭悪くてもお前の方が美人なんだからいーんじゃねぇの」

「ハァ? 何言ってんの? 褒めてねーだろ、それ」

 誰が美人だよ。カッコイイならともかく、美人なんて言われて喜ぶ男がいるかっつーの。
 ベッドの反対側の壁際にある机に腰を下ろしてジュースを飲み始めた時、孝輔が言った。

「俺、炭酸キライ。お前のと交換してくれ」

「デカい男が、可愛らしいコト言ってんじゃねーよ。ってか、もっと早く言え。飲んじゃっただろ?」

「俺は構わん」

 構わないなら、いーか。と、ペットボトルを投げて渡すと孝輔は、ごく普通にオレの飲みかけのジュースを飲んだ。
 だから、オレも深く考えずに軽口を叩いた。

「う〜わっ、間接キスだし。これで、オレ達 友達以上の関係じゃん? 木下達にもカミングアウトしないといけねーな」

「……」

 孝輔は片方の眉を上げて、チラリとオレの方を見ただけで何も言わなかった。
こういうトコ、結構 孝輔との差を感じたりする。
 オレにしろ、木下や岡田にしろ、くだらない冗談や軽口でバカ笑いしたりするけど、孝輔はしない。

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