Novel Library 4

□Symmetry vol.7
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「優輝、今日はどこに行きたい?」

 先輩は俺と会う時、特に行き先が決まっていない時は必ずこう聞いてくれる。
 その話をルキにしたら「行き先なんて前もって決めとくだろ。いちいち聞いてくるなんて、決断力ないんじゃね?」なんて憎たらしいコトを言ったけど、俺はそうは思わない。
 先輩は俺の希望を叶えようとしてくれているだけだ。考えを尊重して、意見を聞いてくれてる。
 ルキみたいに何でもかんでも自分で決めるのは確かに決断力があるのかもしれないけど、言い換えれば自己中だ。

「特にないからどこでもいいです」

 とは言え、俺の答えはいつもこんなだから、偉そうにルキを批判する資格なんてないのかもしれないけど。
 でも、どこに行こうと先輩と一緒なら、それだけで嬉しいんだから嘘は言ってない。
 先輩は「そうか」と呟き、少し考える素振りを見せる。

「それなら、今日はうちに来ないか?少し話したい事もあるし」

 先輩の家!?
 突然の誘いにドキン!と胸が大きく鳴った。
 先輩の家というコトは、ひょっとして先輩の部屋にも入れてもらえる?先輩のプライベート空間に入れるかもしれない?
 それなりに親しくないと家になんて誘わないよな。というコトは、俺は先輩にとって単なる顔見知りの後輩以上になれたってコト?
 思いもよらなかった展開に、俺はすっかり舞い上がってしまった。
 だから、この時の先輩の様子が少しいつもと違うコトに、俺は全然まったく気がつかなかったんだ。

 
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