Novel Library 4

□Symmetry vol.6
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  『 SymmetryE 』


 その日の天気予報は曇りだった。
 一日通して雨は降らないというそれを信じて、俺は傘を持って来なかったんだ。

「やっぱり熱が上がってきたね。無理しないで今日は帰った方がいい」

 確かに朝から調子は悪かった。
 登校してからも具合は悪くなる一方で、仕方なく二時間目の休み時間に保健室に来た。
 でも、まさか熱が出るとは思わなかったな。
 三時間目中、保健室で休ませてもらって再び検温した結果、体温計のデジタル文字は38度を超えていた。
 早退届は養護の先生が担任に渡しておいてくれるというから、俺はクラスメイトが持ってきてくれたスクバを肩に掛け、保健室を後にした。
 妙に足元がふわふわする。
 ルキに早退するって言った方がいいのかな?
 あぁ、でも今は授業中だから、無理か。
 ぼんやりとする頭を抱えて、体の節々が痛むのを我慢しながら昇降口に向う。
 養護の先生は親に連絡すると言ってくれたけど、いつも仕事で忙しくしてる両親の事を考えると熱ごときで呼びつけるのは気が引けたし、中二にもなって発熱で親に頼るのも何となく恥ずかしいような気がして断った。
 けれど昇降口に向う間にも具合はどんどん悪くなる。
 頭が痛み始めた上に、夏だってのに寒気までしてきた。
 大丈夫だとは思うけど、俺、ちゃんと家まで辿り着けるのかな?
 いつもの三倍くらい重く感じるスクバを肩に掛け直して、ようやく到着した昇降口からその先を見た俺は、思いもよらない外の景色に、ポカンと口を開けてしまった。
 雨、降ってる。
 めちゃめちゃ降ってる。

「マジで?」

 なんだよ、今日は降らないんじゃなかったのかよ!
 昇降口の玄関先で降りしきる雨を前に途方に暮れてしまう。
 だってこれ、豪雨に近いんだけど・・・
 こんな雨の中を歩いて帰ったりしたら俺の風邪、悪化するんじゃないの?
 
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