「ルキは…ホントはどう思ってたんだろ?」
絶対に揺るぐコトなんてないと思っていたルキとの関係。
最近、それは俺の勘違いだったんじゃないかって気がする。
ルキにとって俺は、兄貴同様に普通の兄弟でしかなかったんじゃないかって。
だから、同じ人を好きになった俺に嫌がらせみたいなコトもできたんじゃないのかな。俺のコト、もう一人の自分だって思ってたら絶対にあんなコトできるはずないから。
でも、それを言ったら俺も同じか。
ずっとルキに憧れてて、ルキは俺のしたいコトをしてくれるもう一人の自分なんて考えてたけど、結局それは何もできない自分への逃げ道で、行動を起こそうとしないコトへの言い訳だったみたいな気がする。
だって今は分かるから。
自分のしたいコトを実現できるのは自分だけで、ルキのしたコトは俺がしたコトじゃないって。
もう、ルキに自分を重ねちゃいけないんだ。
たぶん……俺達はもう前みたいな俺達ではいられない。
俺は俺で。
ルキはルキなんだ。
双子っていう特別な関係のせいで気づかなかった当たり前のコトにようやく気づいた俺が、少しだけスッキリした気持ちになったのはその日最後の6時間目の授業が終わる頃だった。
一日中、ルキと自分のコトを考えて過ごしてたなんて初めてで、自分でも変だと思うけど、それが俺達の誕生日の今日だってコトに運命的なものを感じたりして、ようやく長いトンネルの先に光が見えたような気分になった。
なんて、そんな仰々しい話でもないのかもしれないけど。
「ユキ、相方が呼んでるぜ」
少しだけ軽くなった気持ちで帰り支度をしているところにかけられたクラスメイトの声に、教科書を束ねた指先がピクリと震えた。
今さっきまで俺の頭の中を占めていた奴の顔が再び浮かんでくる。
相方≠ネんて呼ばれ方をするのは考えるまでもなくルキだ。
もう、ずっと互いに口を聞かずに過ごしてきたルキが俺を呼んでるって?
何で?どうして?
正直言って顔を合わせたくない。
それはルキも一緒だと思ってたのに。
できるコトならスルーしたいと思う気持ちを抑えながら立ち上がる。
クラスメイトが指し示す教室の後ろの出入り口に近づくと、不機嫌そうなルキが壁に背凭れた格好で首だけ回して窓の外を見つめている姿があった。
でも何て声を掛けたらいいのか分からない。まともに顔を合わせるのは何日ぶりだろ。
目の前のルキに戸惑っていたら、不意に俺と同じ顔がこっちを向いた。