Novel Library 4

□Symmetry vol.5
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 ホントは兄貴が考えてるような理由でお祝いを辞退しようとしたわけじゃない。ただ単にルキと一緒に出掛けるのが嫌なだけだ。
 でも、そんなコトを話せるはずもなく、渋々頷く。

「じゃ、ルキにも伝えといてくれよ」

 当たり前のように言われた言葉に動きが止まる。

「え…兄貴から伝えてよ」

「なんで? 俺よりユキの方がルキと顔合せる確率高いだろ?」

「でも……なんか、自分の誕生日でもあるわけだから、そういうのって変な感じするじゃん」

 苦し紛れにこじつけた理由に納得したかどうかはともかく、兄貴はそれ以上追及してこなかった。
 このままだとボロが出そうだから、早く登校した方がいいよな。

「じゃ、学校行ってくる」

 言うが早いか家を飛び出した。
 うちの家族は普段みんなバラバラな生活をしているせいか、よその家以上に心配性なところがある。
 今までずっとベッタリ仲良しだったルキと俺が絶交状態だと知ったら、間違いなく大騒ぎに発展する。心配してもらえるのは有難いけど、今は放っておいて欲しい。
 それにしても…

「誕生日かぁ」

 ホントにすっかり忘れてた。自分の誕生日を忘れたなんて初めてだ。
 だって去年までは毎年、起き抜けに隣で寝てたルキから「誕生日おめでとう」と言われてたから。
 いつだって誕生日に最初にお祝いの言葉をくれるのはルキで、ルキに最初に「おめでとう」を言うのは俺だった。
 改めて考えると、そういうのってどうなんだろう?
 俺達は元々は一個の卵で、生まれる前からずっと二人一緒で、それが当たり前で過ごしてきたけど、ひょっとしたら双子同士でもちょっと結びつきが強すぎなんじゃないかって、この頃思うんだ。
 双子でも、結局は一人ひとり別の人間なんだし、現に俺とルキは似ているところも多いけど似てないところも多い。
 ずっと俺達は特別な兄弟なんだと、ルキはもう一人の自分なんだと思ってきたけど……
 
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