『 symmetry 』vol.5
夏休みが終わった。
あの日以来ルキとは口をきかず、家でもなるべく顔を合わせないようにしながら俺は毎日を過ごした。
それはルキも同じで、部活を引退して以降もほとんど家にいるコトはなく、俺と会うのを避けているように思う。
仕事に忙しい両親も遊びに忙しい兄貴もそんな俺達に気づいた様子はなくて、一見何事もないみたいに日々は過ぎていた。そうして、そんな毎日は新学期が始まっても続いている。
「あれ?ルキは?」
朝食の皿洗いをしていたら、3日ぶりに顔を合わせた兄貴が起き抜けの寝ぼけ眼で聞いてきた。
「知らない」
「朝練かぁ?」
「3年だし、もう部活引退してるから違うんじゃない?」
「ふぅん。部屋にいる様子もなかったけどな。つか、最近のお前らって変じゃね?」
特に意味深な感じもしなかったけど、兄貴の一言にギクリとした。俺達の断絶状態に気がついたのか?
ほんの少しドギマギしながらも、勤めて平静を装って答える俺。
「…何が?」
「前はさ、お前らってお互いの予定とか全部把握してるみたいなとこあったじゃん。でも最近は知らない≠オか言わねぇし」
「双子だからって、いつまでもベッタリなわけじゃないじゃん」
「ま、そりゃそうか」
ケンカしてると言えば心配するのは目に見えてるから、サラリと流す。
それに実際のところ、今の状態がケンカなのかどうか俺にもよく分からない。
こんなにも長く口も聞かず、顔を合わせないようにする生活をしたコトなんてないんだから。
ルキがどう思っているのか分からないけど、俺はやっぱりルキに先輩を渡したくなくて、絶対に負けたくなくて、そんな思いが強すぎてルキを遠ざけたままでいる。
そのくせ先輩に対して何か行動が起こせるわけでもなくて、夏休みに図書館で助けてもらったあの日以来、先輩とも話せていない。
でも一度だけ、新学期が始まってすぐの時に偶然校内で先輩を見かけた。