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□『 True Love なんて いらない 』 完結17
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「祥悟さん…こういうの、なんて言うか知ってる?」

「ん?」

 息も絶え絶えに何度目かの不平をぶつけると、祥悟は気にした様子もなく結有の手を取りグイッと上に引き上げる。
 引っ張られたコトで岩場の窪みに足を掛けるコトができた結有は、難儀をしていた段差をようやく上がるコトができた。

「じゃあ、覚えといて。 こういうのは無鉄砲って言うんだぜ」

 真夜中、祥悟の腕に抱かれたまま熟睡していた結有は、突然に揺り起こされた。
 二人の気持ちにすれ違いを引き起こしていた些細であっても大きな不安が取り払われ、想いを再確認した二人が抱き合い、眠りについてから僅か三時間ほど後のコトだった。
 寝ぼけ眼のまま身支度を急がされ、何が何だか分からないうちに祥悟に連れ出された。
 そうして結有は今、祥悟に手を引かれながら岩場を登っている。

「無鉄砲なんて言うほどの無茶はしてないと思うけどな」

「十分、無茶だよ」

 祥悟のマンションから車で2時間近くの山の中で、結有はため息を吐きながら空を仰いだ。
 頭上には東京では見るコトなど絶対にできない満天の星空が広がっている。

「まぁ、そう言うなよ。 ここを上がったら目的地なワケだし」

 そう言って結有の手を再び引くから、仕方なく足元の岩に手を付きながら急勾配の岩場を上がった。
 最後に妙に出っ張った角のある岩に足を掛けて伸び上がると、そこには少し開けた平らな場所があった。
 もちろん平らと言って岩場なのだから、足場が悪いのは変わらない。

「結有、あんまり動き回るなよ。 崖ではないけど、周りは岩場でできた急な坂道だからな。 落ちたら大けがじゃ済まない可能性もある」

 辺りは完全な暗闇で光源と言えば空に瞬く星々と、唯一の人工の明かりである祥悟と結有の額の辺りで眩いばかりのLEDの光を放っているライトだけだ。
 その上、そんなコトを言われては動き回れるはずもなく、結有が手近にあった適当な岩に腰を下ろすと、すぐに祥悟がザックから取り出したランタンを点け辺りが淡く照らされる。

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