「狡い…」
喘ぎと泣き声の入り混じった不満とも取れる呟きを口にすると、祥悟の手が止まる。
結有は縋りつく体を更に祥悟に密着させながら訴えた。
「俺だって、祥悟さんの手の感触…忘れられなくして欲しいのに、こんな…触り方じゃ……」
最後の方は恥ずかしさで祥悟の肩口に顔を伏せてしまった結有の言葉に、祥悟はハッとしたような顔をする。
「もっと、の続きはそれか?」
改めて聞かれたせいで、結有は伏せた顔を余計に上げられなくなった。
(本気で分かってなかったのかよ)
祥悟らしからぬ鈍感さに唇を尖らせながら肩に頬を擦りつけると、詫びるように頭を撫でられた。
結有の体を抱きかかえた腕が、その背中をゆっくりとラグの上に下ろす。
「結有が本当に俺のものになったんだと思ったら暴走しそうで、セーブしてるうちに自分を見失ってたな」
クスッと笑って額に唇を押し付けてくる。
「なんだよ、それ…」
「余裕が無いから、急ぎ過ぎないように気をつけてたんだ」
「余裕無いって、ホントだったんだ?」
「そう言ったろ?」
困ったとばかりに眉を寄せる祥悟に胸が甘く痛む。
結有は祥悟の首に回した腕を解いて、祥悟の頬に両手を添える。 片方の手に祥悟の手が重ねられた。
「結有のコトが好きで仕方ないんだ。 嫌われるようなコトはしたくない」