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□『 True Love なんて いらない 』 完結15
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 その声に祥悟を額に当てていた手を下ろすと、膝の間で両手をキツく握り合わせた。

「そういうコト…なんだろうな」

「他人事みたいに言うなよ。 チャンスだと思ったんだろ? 自分の気持ちにも気づかないうちに失恋したバカな子供を落とすには絶好の機会だって、そう思ったんだろ? 」

「結有…」

 咎めるような響きで結有を呼ぶ祥悟の声を無視して、立ち上がり祥悟の前に座り込むと俯く祥悟の顔を覗き込むようにして結有は続ける。
 傍から見れば、それは祥悟を責めているような物言いだ。

「落ちると思った? 簡単だと思った? 俺を手に入れたいと思っ−−」

 捲し立てるような勢いで畳みかける結有の言葉を遮るように、いきなり祥悟の手が結有の肩を掴んだ。
 結有に責められるコトが辛いのか、自分のしたコトを悔いているのか、整った顔が苦しげに歪む。
 祥悟は絞り出すような声で呟いた。

「あぁ、思ったよ。 今なら結有を手に入れられる。 俺のものにできるってな」

 キツく掴まれた肩に結有は一瞬体を硬くしたが、怒っているような悲しんでいるような複雑な祥悟の顔を見て体の力を抜く。
 そうして自分を見つめる祥悟をジッと見つめ返しながら聞いた。

「それは…どうして?」

 さっきまでの刺々しさが嘘のように凪いだ結有の声に、祥悟は戸惑ったのか言葉に詰まっている。
 結有は祥悟から目を逸らさずに「どうして?」ともう一度聞く。
 祥悟は言葉に詰まったままだ。
 祥悟を見つめる結有の右手が自分の肩を掴む祥悟の腕に触れ、撫でおろすように滑らせ祥悟の手を握る。
 手を握られたコトに驚いたのか、祥悟は結有の顔と自分の手を握る結有の手を交互に見る。そんな祥悟をジッと見つめ、結有は静かに聞いた。

「俺のコトが、好きだったから?」

 次の瞬間、結有の体は祥悟の腕に巻き込まれるようにして抱きしめられていた。

「そうだ。 お前のコトが好きだったから、どうしても、どんな手を使っても手に入れたかったんだ。 狡いのは分かってた。 それでも結有が欲しかったんだ」

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