息が止まりそうなほどに強い抱擁に身を任せた結有は、小さく深呼吸すると祥悟の胸に両手を付き体を離した。
そうして祥悟の顔を真正面から見据えて尊大に言い放つ。
「だったら、最初からそう言え!」
「え…?」
僅かに唇を尖らせ拗ねたような顔で祥悟を睨んだ結有は、祥悟の手を握りしめる指に力を籠めた。
「俺のコトが好きなんだろ? 卑怯な手でも、何を利用してでも自分のものにしたかったんだろ?」
そう言うと、結有は祥悟の胸に勢いよく飛び込んで広い背中に腕を回した。
「そうまでして手に入れたんだから……もう絶対に離したりすんなよ」
「結有…?」
戸惑ったような祥悟の声に愛しさが募る。
(どうしよう、俺、嬉しくて仕方ない)
こんな形で祥悟の想いの強さを知るコトができるなんて思わなかった。
祥悟は気づいていないのだろうか?
祥悟の言葉は、祥悟がどれほど結有に執着しているのかを伝えてしまっているのだというコトに。
結有は思う。 何をしてでも手に入れたかったなんて、最上級の好き≠フ現われなのではないだろうかと。
「狡くたって、打算があったって、そんなのどうでもいいよ。 俺が今どれくらい嬉しいか分かる?」
抱きしめた祥悟の胸から響く心音が祥悟の緊張を、結有の体を抱きしめ返すコトもできずに彷徨う指先が祥悟の戸惑いを伝えてくる。
それを消したくて結有は祥悟を抱きしめる腕に力を籠める。
「祥悟さんは俺のコト好きだって言ってくれたけど、いつも余裕があって、俺との気持ちに温度差があるような気がしてたんだ。 俺一人が祥悟さんのコト好きで好きでどうしようもなくてって、ずっとそう思ってた。 でも違ったんだ。 祥悟さんも俺のコト、どうしようもないくらい好きでいてくれたって、そういうコトなんだろ?」