その中の写真を何枚か手に取る。 見れば俺はいつも先輩の隣にいた。
ずっと片思いしていた頃から、せめて写真くらいはと意識して隣に並んだりしていたのを思い出した。
でも叶うコトなどないと思っていた気持ちに先輩が答えてくれてからは、逆に隣に並ぶのが気恥ずかしくて努めて距離をとるようになってしまって、それを先輩にからかわれたりした。
『恥ずかしがってないで、もっと堂々と俺の隣にいろよ』
そう言って先輩は人前でも平気で手を繋いできたりしたよな。
さすがに社内ではなかったけど、したくてもできない俺の気持ちをいつも代わりに言葉にして行動してくれた。
それがどれほど嬉しかったか…。
そんな優しい先輩のためにも俺は、俺ができるコトをするんだ。
懐かしい写真を引き出しにしまって立ち上がる。
先輩が帰ってくるまでに、やるべきコトはまだたくさんあるのだから。
××××××××
夕方、季節外れの夏物をダンボールに詰め込んでいたら、玄関の方で物音がするコトに気づいた。
帰りは夜になると言っていたのだから、まさか先輩ではないだろうと、首を傾げる。
ついさっき先輩の部屋からダンボールを運んできたばかりで、その際 玄関の鍵を掛けた記憶がなかったから念のために様子を見に行くコトにして立ち上がる。
寝室からリビングへのドアを開けた途端、俺はその場に予想していなかった先輩の姿を見て驚きのあまり固まった。
「先輩…どうして…?」
「ただいま、詢」
何事もなかったような笑顔を向けてくる先輩に、何を言ったらいいのか分からない。
気持ちは決めていたものの、雑事にかまけていた俺にはまだ心の準備ができていなかった。
「予定を切り上げて帰ってきたんだ。 なんか部屋が妙に片付いてるけど、大掃除でも始めたのか?」
「先輩…俺……」
何と言って切り出そう。
今日、クリスマスイブのこの日に俺の決心を伝えるつもりではいた。
でもそれは俺の中の卑怯な計算の上でのコトだ。