Novel Library 4

□『 NIGHT FULL OF MISTAKES 』 後編
1ページ/9ページ

 
3.
 翌朝、目が醒めると俺は昨日のスーツ姿のままソファに凭れていた。
 昨夜はあのまま眠ってしまったらしい。
 ずいぶん早くから眠ってしまったせいか、目覚まし時計代りのケータイのアラームが鳴るまでまだ2時間近くある。
 当然、外はまだ暗い。
 点けっ放しだった電気の明かりに目を瞬かせながら、ふとケータイに目をやるとメールが届いているコトに気づいた。
 開くとそれは羽純先輩からのメールだった。
 昨日、俺が寝入ってしまってから届いたようだ。

「……」

 目を通すと、そこには今回の出張の顛末が書かれていた。
 本部長に呼び出されたものの行ってみれば仕事ではなく、1日がかりでゴルフにつき合わされたそうだ。 その後も宿泊予定のビジネスホテルの近くで飲みにつき合わされたようで、メールを打ったのはどうやらこの頃らしかった。
 そして明日、つまり今日24日もまだ何かにつき合わされるようで、帰りは夜になりそうだと書かれている。
 メールにはどこをどう読んでもお見合い≠フ文字は見つけられなかった。
 故意に隠しているのか、お見合いの話自体がガセだったのかはメールを見ただけでは分からなかった。
 でも、もうそんなコトは気にならない。
 先輩がお見合いしてもしなくても、俺が先輩のためにしてあげられるコトは一つしかないと分かっているから。
 ケータイをテーブルに戻して、うっすらとシワの付いたスーツを脱いだ。
 考えなければならない雑多なコトはたくさんあるけれど、急いで決められるようなコトではないからと総てを後回しにしていつもの休日と同じように過ごすコトにする。
 掃除をして洗濯をして、大掃除とまではいかないまでも年末に向けて物を少し処分して。
 やるコトはいくらでもある。
 そうして夜までの時間を雑事に追われながら過ごそう。
 1LDKのさして広くもない部屋なのに物はいつの間にか増えていた。 先々のコトを考えればこの際、荷物をまとめる準備もしておいた方がいいのかもしれない。
 先輩が隣に越してきた時に使ったダンボール箱が畳んだままで捨てる暇もなく、先輩の部屋のクローゼットにしまわれているコトを思い出して後で取って来ようと考える。
 普段使わない物から整理した方がいいだろうとめったに開けないチェストの引き出しを覗いてみると、仕舞い込んだ物の中から先輩との今日までを思い出すような物が出てきた。
 配属当時の飲み会の写真や社内旅行の写真とか、デートで行った先の入場券や映画のパンフレットや半券、そんなものばかりが残してあった。
 こんな物をとっておいた自分が痛くて悲しい。
 
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]