だとしたら、どう否定したって無駄ってコトじゃないか。
「ユキに、あの人に抱かれる覚悟があるってんなら……」
「なら…なんだよ…」
耳元で響くルキの声が感情を逆なでる。
それと同時に、体の奥に隠しておいた誰にも知られたくない願望まで逆なでされた気がして居たたまれない。
「教えてやるよ」
声と同時に熱くてぬめった柔らかいものが耳の中に差し入れられて、鳥肌が立つような感覚がゾクッとうなじを走った。
思わず肩を竦めた俺は、それがルキの舌だと気づいてどうしようもなく慌てた。
なんとかルキを押し返そうと両手を突っぱねたけど、その手は難無くルキに一纏めに掴まれ、更に身動きができなくなる。
ルキの手は躊躇う様子も無くて、動けない俺のベルトを外し始めた。
「な、何する気だよ!?」
「教えてやるって言ったろ?」
そう言って俺を見るルキの目に、何か獰猛なものを感じて無性に怖くなる。
こんな風にルキのコトを怖いなんて思ったのは初めてだ。
なんとかルキの手から逃れようと体を捩ったけど、どうにもできないままズボンのホックが外された。
「ルキっ!」
ルキが何を考えてるのかまったく分からなくて、なんとか止めようとルキを呼んだ。
何をしようとしているのか、なんて考えたくない。 考えたくないのに、あの夜に自分の部屋でルキにされたコトを思い出してしまう。
まったく躊躇いを見せないルキの指先がファスナーを下ろすのを感じて、無駄だと知りつつも必死にバタバタと暴れた。
俺なりに頑張ったつもりだけど、両手を拘束されて利き足も抑え込まれた俺はやっぱり右足で虚しく空を蹴るしかできない。
その代わりというか、残された抵抗がそれしかなかったからだけど、俺は思いつく限りの悪態をルキに向かって投げつける。
「離せ、バカっ! 変態っ! ルキのアホ! 死ねっ!」
相変わらずレベルの低い悪口(あっこう)しか出てこないけど、それが俺にできる精一杯だった。