口にしたコトで自分が先輩に抱く恋心が普通じゃ無いコトを改めて自覚した。
これが普通にクラスの女子や、同じ先輩でも女子の先輩だったなら、俺は隠すコトなくルキに話していたと思う。
言い出せなかったのは、この恋が誰にでも覚えがあるようなありふれたものではなかったから。
「そんなの、大したコトじゃないだろ?」
俯く俺に降って来た予想外のルキの言葉に思わず顔を上げた。
同じ高さにある鏡の中の俺と同じ顔が、つまらなさそうな表情で俺を見ていた。
「は?」
「男同士だと、なんか問題でもあるワケ?」
それがどうしたとでも言いたげなルキの顔を俺は呆けたみたいに見つめる。
だって、男同士で好きとかって普通じゃないだろ?
それなのに、なんでそんなに平気な顔してんだよ…。
「ユキはそんなコトを気にしてたんだ? その程度の気持ちなら、ユキのあの人への想いなんて大したコトないな」
ルキの言い草にカチンときて、つい言い返してしまう。
先輩に対する俺の気持ちが大したコトないなんて、どうしてルキに言われなきゃいけないんだ。
「そんなのルキに言われたくない」
だいたいルキの言ってるコトはムチャクチャだ。
気にするなという方が無理だろう?
なんだか無性に頭に来た。 同性を好きになったコトのないルキに、俺の気持ちなんて分るワケがないんだ。
俺の悩みなんて悩みじゃないとでも言いたげなルキの手を思いきり振り払う。
このままルキと話していても腹が立つだけだって気がして、俺は部室を出るためにルキの横をすり抜けようとしたのだけれど、いきなり肩を掴まれて強い力で壁に押し付けられた。
強かぶつけた背中の痛みに顰めた顔を掴まれたと思ったら、ルキに唇を塞がれた。
「っ!」
頬から顎にかけて掌でガッチリと掴まれ、片方の手で肩を掴まれた俺の背中は思うようには壁から離れてくれない。
どんなにルキの胸を押し返しても逃れられないと知って、蹴りでも入れてやろうと足を動かした時、今度は足の間にルキの足が滑り込んで来た。
グイッと体を押し付けられて、上げかけた左足の動きも封じ込められてしまう。
唯一動かせる右足はルキの体を蹴るコトもできなくて、ただバタつかせるのがやっとだった。