Novel Library 4

□『 Symmetry 』 vol. 4
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 俺は…例えルキでも、先輩を渡したくない。

「ユキ?」

 ルキの腕を掴んだまま急に俯いた俺を心配げなルキの声が呼んだ。
 散々俺にしたいコトをしたくせに今更そんな声で呼ぶなんて、なんでそんなに狡いんだ。
 緩んだ手の力に、いつもルキは最後の最後で俺に甘いってコトを思い出した。
 双子なのに、俺の方が兄貴なのに、いつもルキは保護者気取りだ。
 だからって俺はルキには負けたくない。
 先輩のコトだけは諦めない。

「渡さない…」

「え?」

 呟くみたいな声量だったから、ルキの耳には俺の言葉は届かなかったらしい。
 顔上げてしっかりとルキを見据えて宣言する。

「俺は先輩のコトが好きだから、諦めるなんてしたくない!」

「まだそんなコト言ってるのかよ――」

 呆れたような口調のルキの手を力一杯振り払う。
 驚いたような目が俺を見つめてくる。
 そりゃそうだろう。 俺とルキがこんなにも真っ向からぶつかるのなんて、きっと初めてだろうから。
 双子だからか、俺達は意見がぶつかるコトすらあんまり無かった。
 それに俺が優柔不断なせいで、主導権はいつもルキが握っていたから。
 俺が何かに迷ったりした時、指針はいつもルキが決めてくれた。
 今日まで俺はそうやってルキに手を引かれて、ルキのいう通りに生きてきた。
 でも…。

「傷つくとか、そんなの構わない。 諦めるくらいなら、その方がずっとマシだ!」

 きっとルキは、俺を先輩から遠ざけたいんだろう。
 このままルキの言うコトを聞き続けていたら、俺は先輩への気持ちを諦めるしかなくなる。
 そうと分かっていて言うコトを聞くほど、俺はバカでも意気地なしでもない。
 自分の恋の終わりを他の誰かに決められるなんて絶対に嫌だ。
 決着は自分で着ける。
 ルキに先輩は渡さない。
 俺はルキの目を真正面から見つめて言い切った。
 
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