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□『 Cultural festival 〜折園シリーズ番外編〜 』 5
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 先輩と俺、ほぼ同時にドアの方へと顔を向け、そして俺は固まった。
 かろうじて喉の奥から絞り出した声で、今ここに居るのがどうしてなのか分からないそいつの名前を呼ぶ。

「折口…」

 突然すぎる驚きと、あまりのタイミングの良さに声が掠れた。
 折口は先輩を一瞥して無言のまま つかつかと歩み寄って来たと思ったら、いきなり俺の襟首を掴んで後ろに引いた。
 想像以上の強い力で、首が締まった上に上半身だけが後ろに引かれた状態に足がついて行かず、ひっくり返りそうになった俺はとっさに折口の肩を掴んだ。
 この状況で俺一人転ばされるなんて嫌だ。
 転ぶんなら折口も道連れにしてやる。
 そう思ったけど、折口はよろめいた俺の体重なんかものともせず、受け止めるように腰に回した腕で俺の体を難なく支えた。

「何してたんですか? 岩井先輩」

 聞いてるこっちが身の竦むような冷たい声で、折口はまっすぐ先輩を見据える。
 決して愛想がいい方ではないけど、こんな刺々しい折口は初めて見たような気がする。
 それだけで折口が怒っているんだと俺には十分伝わってきた。

「別に」

 そんな折口に対峙する先輩も、見たコト無いくらい怖い顔をしていた。
 優しくて穏やかで何でもできて、滅多なことでは怒ったりしない。 でもそんな凄さを絶対にひけらかしたりはしない、そういう先輩の姿しか見たコト無かったのに、今こんな顔をさせているのは俺のせいなのかもしれないと思ったら、何もできずに二人の間でただおろおろするしかなかった。

「折口には関係ないだろう?」

「関係なかったら、この考え無しのバカ探して学校中走り回る様な真似はしませんけど」

 あまりの言いように思わず折口の顔を見る。

「バカってなんだよ。 元はと言えば折口がいつまで経っても当番終わらねぇからいけないんだろ!」

「当番なんてとっくに終わってる。 ケータイの電源落としてたのはお前だろ? どれだけ探したと思ってんだ」

「ハ?」

 何言ってんだ。 ケータイの電源なんて落としてる訳ないだろ。
 だけど、制服のポケットから取り出したケータイを開いて俺は言葉を失った。
 折口のいう通り、ケータイは電源が入っていなかった。
 
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