「ちょ…先輩、お友達いーんすか? 行っちゃいましたよ?」
「いいよ。 それより暇なんだろ? 一緒に回ろうぜ」
「でも…」
とっさにいろいろと考えてしまう。
俺が暇してるからって、岩井先輩につき合わせるのは悪いと思ったのがまず一つ。
先輩がつい心配してしまうような顔をしていたコトに今更ながら後悔したけど、まさかあんな所を見られるとは思っていなかったんだから、これは不可抗力…だよな。
だとしても、問題がもう一つ。
それは岩井先輩と二人で行動するのは、やっぱりマズいんじゃないかって気がするってコト。
以前に比べてずいぶん軟化したとは言え、折口は未だに俺が岩井先輩と一緒にいるのを嫌がる。
絶対に考え過ぎだと思うけど、折口の中では岩井先輩が俺に特別な感情を持ってるコトになってるから。
俺からしたら、完全な折口の色眼鏡だと思うんだけどさ。
「でも?」
聞き返されても「折口が怒るから」なんて言えるわけがない。
「先輩を俺につき合わせるのは…悪いかな、なんて…」
「俺が行こうって言ってるのに? それとも園田は俺と回るの嫌なのかな?」
くすっと笑った先輩が俺の顔をのぞき込むようにして近づいて来た。
小さな子供を見るような目で見られるのは どうにも恥ずかしかったけど、先輩の気遣いは十分伝わってくる。
拗ねた顔をして一人でいた俺のコトを心配してくれてるんだよな。
先輩に下心なんて無い。 優しげな笑顔を見て、そう思った。
「そんなコトないっす。 じゃあ、ちょっとだけ一緒に回ってくれますか?」
「決まりだな。 あ、お前 昼食った?」
「まだっすよ。 さっきまでクラスの当番やってたし、購買に行く暇もなかったんすから」
そう口にした途端に我慢できないくらいの空腹が襲ってきた。
ついさっきまで折口と文化祭を回れないコトに凹んでたくせに、現金過ぎる俺の胃袋は盛んに食べ物を要求してくる。
「じゃ、何か食いに行く? すぐそこの1−Eがお好み焼きやってるぞ。 あと1−Aが焼きそばで、クレープやってるクラスもあったな…」
「マジ腹減ってるんで、一番近いトコがいーっす」