「……」
ちょっと違うか。
折口と俺は一応つき合ってる訳だし、内緒の関係とは言えカップルってコトになるんだよな。
でも、高校生の作った文化祭のお化け屋敷なんてどう考えても大したコト無さそうだから、結局カップルで手を繋いで入って、女子がわざとらしく怖がるのを男が庇ってやる的なシチュエーションが楽しいってコトなんだろうな。
そうなると折口と俺にはどう考えても当てはまらない。
「園田クン、まだ余所のクラス展示回ってないってホント?」
「あ? うん、そうだけど…」
いきなり声を掛けて来たクラスの女子に、椅子に座ったまま視線を移す。
この子、なんて名前だっけ?
ダメだ、思い出せねぇ。
同じクラスになって半年経つのに、どうも女子の名前は覚えられない。
「わ、私も今から回るんだけど…良かったら、一緒しない?」
一瞬、意味が解らなくて目を瞬いた。
「え?…あ、ごめ…約束あるんだ、俺…」
意味を理解した俺が戸惑いながらもそう言うと、その子は慌てたように両手を振って謝って来た。
「あ、いいの、別に。 ごめんね、なら、いいの。 なんとなく、どうかなって思っただけだから」
その様子に返って戸惑いが増したような気がする。
隣で依田が何とも言えない表情で俺を見ているのも、それを助長した。
「ごめん…」
ここで謝るのもどうかと思ったけど、何も言わないのも悪いかと思ってとりあえず謝る。