「じゃあ、ローソクは諦めるとしてプレゼントは何がいい?」
『あのな、すねかじりのお前からプレゼントなんてもらえるわけないだろ? …結有が一緒に居てくれるだけで最高のプレゼントだよ』
聞いている方が恥かしくなるような殺し文句に、結有は自分を単純だなと笑いながらも胸の内が震えるのを感じた。
熱くなりっ放しの頬を手の甲で擦りながら、祥悟の誕生日には絶対この恥かしさを倍返ししてやろうと心に決める。
「でもさ、せっかくの誕生日なんだからプレゼントはあげたいし、何か欲しい物 無いのかよ?」
好きな人の誕生日を祝えるのが、こんなに嬉しい気持ちだなんて結有は知らなかった。
祥悟の特別な日に、一緒に居たいと言ってもらえたコトは何より結有を喜ばせた。 だからこそ、祥悟の誕生日はこの何倍も何十倍も祥悟を喜ばせたいと結有は思う。
受話口の向こうで祥悟が考え込んでいるのが分かったが、結有は早く返事が聞きたくてウズウズする。
ややあって「それじゃあ」と、祥悟の笑いを含んだ声が聞こえた。
『結有の手料理が食べたい』
(…ベタだな)
とは思ったが、それも口にはしなかった。
それと同時に「そんな物でいいのか?」と思う。
別段、結有は料理が得意なワケではないし、特別な日のプレゼントになるような物なんて作れはしない。
仕方なく結有は、素直に自己申告する。
「いいけど、俺 大したもの作れないよ。 自炊ったって、誰でも作れるようなモンしか作ったコト無いし」
『それでも俺よりはマシだろ? 俺、自炊しない人だから、料理は一切できない』
できないコトを気にもせず言い切った祥悟に、呆れて言葉を失う。
(作れないって、自信満々に言うのってどうなんだよ?)
そうは思ったが、言われてみれば祥悟が料理をしている姿を結有は見たコトがない。
新品同様のキッチンに祥悟が立つのは、お茶を入れる時くらいだ。