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□『 True Love なんて いらない 』 完結10
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「何の話だよ、一体」

「見てないの? 見てないんだよね? ……良かった」

 祥悟にレシートの内容を見られていないと知り、ついさっきまで買って来た避妊具を手渡そうと考えていた人間とは思えないほど、ホッとして安堵の表情を浮かべる結有だった。
 あんな物を買ったコトを祥悟に知られるのはやはり恥ずかしいし、不埒な期待をしていると思われるのも癪な気がしたのだ。
 祥悟を誘うのは何か別の方法にしようと考えた時、祥悟がニヤリと嫌な笑みを浮かべるのを結有はハッキリと見てしまった。
 その微笑みの意味が解らず戸惑う結有に向かって、祥悟は事もなげに言った。

「別にいいけどさ。 スキン買ったの、そんなに知られたくなかったのか?」

「見てんじゃん!?」

 途端に逆流した血液が一気に頭まで登って行く気がする。
 頬がやたら熱いのは気のせいではないだろう。

「なんで恥ずかしがるんだよ」

 そんなコトを言われても恥ずかしがらずにいられるはずが無い。
 不本意に買う羽目になったとは言え、祥悟はその経緯を知らないのだから結有が自分の意志でそれを買ったと思っているだろう。
 避妊具の意味するところが何であるのか分かった上でイタズラっぽく笑う祥悟を恨みがましく睨みつける。

「俺に知られたくなかった?」

 答えられないままに祥悟を睨み続けていると、その笑みが意地の悪いものに変わって行く。

「なんだよ、もしかして他の誰かと使うつもりだったのか?」

「そんなワケ無いだろ! つか、これは不可抗力で…」

 無意識に語尾がフェードアウトしてしまったが、嘘は言っていない。
 あの時、カップルの男に押されなければ、あんな物は元の場所に戻していたはずだ…多分。

「不可抗力? なんだ、それ」

 くすくすと笑う祥悟に上手く説明できない腹立たしさが募る。
 だが、避妊具を買ったのは本当に意味の無い成り行きだったとはいえ、自分の中に明らかな欲望を覚えてしまった今ではどんな説明をしようとも最終目的地は同じなのだから如何ともしがたい。
 これはもう下手に説明なんてするよりも、このまま祥悟の意地悪な言動に頷いてしまった方がコトは簡単で、結有の望む目的地への最短ルートなのかもしれない。
 もちろん、誤解されたままなのはかなり悔しいものがあるのだけれど。
 
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