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□『 True Love なんて いらない 』 完結9
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「黒木? …あぁ、入社したての頃はな。 でも、デザイン部から企画部に転属願いを出して、今はプランナーをしてる」

「ずっと一緒に仕事してたんじゃないの?」

「いや、一緒だったのは一年だけだな。 俺が会社を辞めるのと黒木が企画部に移ったのがちょうど同じ頃だったから」

「一年だけ? その割には仲良すぎない?」

 祥悟と黒木の仲の良さからすると思いがけなかった短期間さに、いささか驚いて顔を上げると瞳がパチンとかち合った。
 その途端、祥悟の口許にうっすらと笑みが浮かぶ。

「それ、もしかして嫉妬か?」

「なっ!? ……に言ってんの? 全然 違うし…」

 フイッとそっぽを向いたものの、首の後ろが妙に熱い。
 二人の仲の良さに興味を持っただけで深い意味なんてない、と思いながらもその根底に嫉妬心が無かったとは言い切れず、焦りに結有の心臓は勝手に回転数を上げてしまう。

「違うのか? なんだ、残念だな」

 押し殺したような笑いを唇にのせた祥悟の腕が結有の体に回され、抗う間もなく膝の上に座らされた。

「なんだよ…違うって言ってるだろ?」

「ん、それは分かったけど、ちょっと甘えてもらいたくなったんだ。 このまま座っててくれないか?」

 そんな風に耳元で囁かれると、膝の上から逃げ出そうともがいていた体から力が抜けていく。
 真綿で包むようにフワリと抱きしめられ、肩口に頭を預けると優しく背中を撫でられた。
 その手の感触が気持ち良くて、鼓動は少しづつ落ち着いていく。
 結局、嫉妬も焦りも何もかも見抜かれていて、うまく祥悟に宥められてしまったようだ。

「黒木が俺に懐いてるのは、俺だけがアイツのデザインを認めてたからなんだ」

「……」
 
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