『 夜空に咲く花 』 折園シリーズ
事の起こりは、姉貴からのプレゼントだった。
この夏、3つ年上の姉貴が近所のショッピングモールでアルバイトを始めた。場所は期間限定の特設の浴衣売り場。
で、何を思ったのか俺にも浴衣を買ってくれた。
その話を何となく折口に話したところからすべてが始まったんだ。
「な、だから一緒に行こうぜ、花火大会」
夏休み真っ最中の8月。
今日は2年生対象の模試で、めんどくさくも朝から登校している。
インハイ予選なんて夏になるより前に敗退してるうちのバレー部は、テレビでの高校総体の盛り上がりなんてまったく関係なく、俺達の高2の夏はどちらかというと進学校らしく勉強7割に部活3割といった感じで過ぎている。
特別スゴいコトなんて何も起きない。
普通でありふれた夏休み。
でも俺達はそれで十分楽しかったりする。
「花火大会に行くはいいけどさ、何で浴衣着てかなきゃなんねぇんだよ」
「姉ちゃんに買ってもらったって言ってたろ?せっかくなんだから着て来いよ」
「ん〜、でも花火大会の会場は海だろ?遠いじゃん。電車乗ってかなきゃなんねぇし――」
「いいじゃん、着て来いよ」
「着慣れないもん着ての遠出はなぁ…」
つい口を滑らせたんだけど、折口の食いつきはハンパなかった。なんでそんなに浴衣に拘るのか分からない。
だいたい浴衣着て出歩くって、ちょっと恥ずかしくないか?
女子ならともかく、あんま男が浴衣着てるの見たコトないし。
「せっかく買ってもらったのに、もったいなくね?」