Novel Library 3

□夜空に咲く花
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  『 夜空に咲く花 』 折園シリーズ


 事の起こりは、姉貴からのプレゼントだった。
 この夏、3つ年上の姉貴が近所のショッピングモールでアルバイトを始めた。場所は期間限定の特設の浴衣売り場。
 で、何を思ったのか俺にも浴衣を買ってくれた。
 その話を何となく折口に話したところからすべてが始まったんだ。

「な、だから一緒に行こうぜ、花火大会」

 夏休み真っ最中の8月。
 今日は2年生対象の模試で、めんどくさくも朝から登校している。
 インハイ予選なんて夏になるより前に敗退してるうちのバレー部は、テレビでの高校総体の盛り上がりなんてまったく関係なく、俺達の高2の夏はどちらかというと進学校らしく勉強7割に部活3割といった感じで過ぎている。
 特別スゴいコトなんて何も起きない。
 普通でありふれた夏休み。
 でも俺達はそれで十分楽しかったりする。

「花火大会に行くはいいけどさ、何で浴衣着てかなきゃなんねぇんだよ」

「姉ちゃんに買ってもらったって言ってたろ?せっかくなんだから着て来いよ」

「ん〜、でも花火大会の会場は海だろ?遠いじゃん。電車乗ってかなきゃなんねぇし――」

「いいじゃん、着て来いよ」

「着慣れないもん着ての遠出はなぁ…」

 つい口を滑らせたんだけど、折口の食いつきはハンパなかった。なんでそんなに浴衣に拘るのか分からない。
 だいたい浴衣着て出歩くって、ちょっと恥ずかしくないか?
 女子ならともかく、あんま男が浴衣着てるの見たコトないし。

「せっかく買ってもらったのに、もったいなくね?」


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