「すげぇ、温かい」
こたつ≠ノ足を突っ込んで子供みたいにはしゃぐ折口を横目に、俺はその向かい側に座った。
というか、ベッドと机に挟まれたこたつ≠ノは、その2か所しか座る場所が無い。
「あ、これ、うちにあったから持ってきた」
俺がこたつ≠ノ座るや否や、折口が紙の手提げを差し出してきた。
「サンキュ。 あ、ミカンじゃん」
中には小ぶりのミカンがぎっしり詰まっていた。
「オカンがネットで取り寄せたんだ。 小太郎ミカンだってさ」
「小太郎? 名前付いてんの?」
「小粒だけど、美味かったぜ」
美味かったと聞いて、さっそく何個か取り出して皮を剥く。
ホントに小さなミカンだから一口でも食えそうな気がしたけど、折口の手前 半分に割るコトにした。
口いっぱいに頬張って変顔になったりしたら嫌だもんな。
噛んだ瞬間、口からミカンの汁が垂れたりしたら、それこそ目も当てられない。
これでも一応 恥じらいなんてものがあったりするんだ、折口に対して。
なんて、背中がこそばゆくなるようなコトを考えた自分が気持ち悪くて、それを誤魔化すためにミカンを口に放り込んだ。
「甘っ!」
「だろ?」
なんだ、これ。 ものすごく甘い。 まるで缶詰のシロップ漬けのミカンを食べてるみたいだ。
これなら何個でも食えそう。
そう考えた後、ハッとする。
この味といい、大きさといい…。
「なぁ、もしかしてこのミカン、めちゃくちゃ高いんじゃねぇの? 」
「知らねぇ。 オカンがネットの取り寄せで衝動的にキロ買いしたせいで、やたらとたくさんあるんだ。 持ってけって言うから持って来ただけだし、俺もちょっと食い厭きてたしな」