Novel Library 3

□『 こたつとミカンとプライドと 』
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「すげぇ、温かい」

 こたつ≠ノ足を突っ込んで子供みたいにはしゃぐ折口を横目に、俺はその向かい側に座った。
 というか、ベッドと机に挟まれたこたつ≠ノは、その2か所しか座る場所が無い。

「あ、これ、うちにあったから持ってきた」

 俺がこたつ≠ノ座るや否や、折口が紙の手提げを差し出してきた。

「サンキュ。 あ、ミカンじゃん」

 中には小ぶりのミカンがぎっしり詰まっていた。

「オカンがネットで取り寄せたんだ。 小太郎ミカンだってさ」

「小太郎? 名前付いてんの?」

「小粒だけど、美味かったぜ」

 美味かったと聞いて、さっそく何個か取り出して皮を剥く。
 ホントに小さなミカンだから一口でも食えそうな気がしたけど、折口の手前 半分に割るコトにした。
 口いっぱいに頬張って変顔になったりしたら嫌だもんな。
 噛んだ瞬間、口からミカンの汁が垂れたりしたら、それこそ目も当てられない。
 これでも一応 恥じらいなんてものがあったりするんだ、折口に対して。
 なんて、背中がこそばゆくなるようなコトを考えた自分が気持ち悪くて、それを誤魔化すためにミカンを口に放り込んだ。

「甘っ!」

「だろ?」

 なんだ、これ。 ものすごく甘い。 まるで缶詰のシロップ漬けのミカンを食べてるみたいだ。
 これなら何個でも食えそう。
 そう考えた後、ハッとする。
 この味といい、大きさといい…。

「なぁ、もしかしてこのミカン、めちゃくちゃ高いんじゃねぇの? 」

「知らねぇ。 オカンがネットの取り寄せで衝動的にキロ買いしたせいで、やたらとたくさんあるんだ。 持ってけって言うから持って来ただけだし、俺もちょっと食い厭きてたしな」

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