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□『 こたつとミカンとプライドと 』
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折園シリーズ 番外編2
 『 こたつとミカンとプライドと 』 前篇


「おぉっ、こたつ≠セ!」

 これが俺の部屋に入った折口の開口一番の言葉だった。
 たかがこたつ≠ナ、ここまで驚ける折口に俺の方が驚く。
 いや、でも待てよ。
 折口が驚いたのは「こたつに」ではなくて、「こたつに占領された俺の部屋に」なのかもしれない。
 我が家の和室で長年使っていたこたつ≠年末に買い替えて、それまで使っていた4人掛けのこたつ≠ェお役御免となったから、それを俺がもらって部屋に置いた。
 予測はしていたけど、俺の部屋は元々ある机とベッドで既にギリギリの狭さだったのに、そこにこたつ≠入れたら…もう想像は着くだろう。
 はっきり言って家具類がひしめき合っている。
 タンスはおいてないけど、クローゼットを開くスペースを確保しないといけなかったからこたつ≠ヘ迷う必要もなくベッドと机の間に設置した。
 机は椅子を引くスペースも多少必要だし、当然ベッドとこたつ≠ヘ陸続きになっている。
 部屋は狭く(というか、もはや物置状態だ)なったけどこたつ≠フ便利さには変えられない。
 エアコンを点けるより断然温かいし、寒い思いをしながら勉強机に向かう必要もないし、何より眠くなったらそのまま寝られる。
 たかが陸続きのベッドに移動するだけじゃないかと言われそうだが、その僅かな移動が俺にとってはメチャクチャめんどくさいんだ。
 眠くなったらすぐに寝られる。 これぞ天国。 こたつ@l様だ。

「すげぇ、これ園田のマイこたつ=H」

「そうだけど?」

「いいよなぁ、自室にマイこたつ≠ゥ。 いや俺さこたつ≠ノ入るの初めてなんだ」

「はぁ!? マジで?」

 思わず声がひっくり返った。
 17歳にしてこたつ<fビュー? つか、日本に住んでる日本人なのにこたつ≠フ無い家なんてあるのか?
 物心ついた時から、当たり前のようにこたつ≠ニ過ごして来た俺には信じられない話だ。
 あ、だから部屋に入った時、折口はあんなに驚いてたんだな。

「マジ。 うちのオカンこたつ£uくの嫌なんだとさ」

 へぇ、こたつ≠フ嫌いな人なんているんだな。

「入ってもいいか?」

「うん」

 普段、俺は入口に背を向けてこたつ≠ノ入る。 この位置に座ると左側にあるベッドに寄りかかった状態でテレビが見られるからだ。
 でも今日は、一応お客様≠フ折口に特等席を譲ってやった。

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