『 SLOW LOVE vol.9 』
××××××××
「圭、起きてる?」
暗い寝室のベッドの上で、俺の体は千早と毛布にすっぽりと包まれていた。
セックスの後、俺がイっていないと気づいて伸ばされた千早の手を拒んで背中を向けたら、そのまま毛布と千早の腕に抱きしめられた。
後戯を拒んだ俺を、千早の腕は何も言わずにただ優しく包んでいた。
そうして背中から抱きしめられた状態で、もうどのくらいの時間が過ぎたんだろう。
5分か、10分か、それとも1時間か。
心と体がバラバラのままセックスを終わらせた俺は、今も何も修復できていない。
心は何かを感じ取るコトを拒否してるみたいに頑なだった。
「……」
何も言葉を返さない俺を心配したのか、千早が背中越しに覗き込んでくるのが分かった。
「止めろよ…」
それを手で制して、更に体を捩じってほとんど俯せになる。
放っておいて欲しかった。
今の俺は自分自身のコトすら分からずにいるのに、更に分からない千早のコトまで考える余裕はないから。
「ごめん…」
宥めようとする指先で俺の髪を撫でながら耳元に謝られて、思わず振り返った。
至近距離に千早の戸惑ったような顔。
「…圭に…拒否られたと思ったら自制が効かなくなった……」
その一言に、本気で泣きたくなった。
いや、それは希望なんかじゃなく、本当に俺は泣いていたらしい。
「圭?」
千早の驚いたような声が俺を呼んだ。