Novel Library 3

□『 SLOW LOVE 』 vol. 7
3ページ/8ページ

 
 「お前も」と言う以上、多田さんは寂しい連休なんだろう。
 多田さんと三波さんはあれからどうなっているんだ?
 千早と三波さんのコトを考えるのが嫌で、なんとなく多田さんからも三波さんの話を聞かないようにしていたけど。

「多田さん、あの…井岡の三波さんとはその後どうなってるんですか? メアド交換したからG.W.に誘ってみるとか言ってましたよね?」

「三波さん? 誰だ、それは? 俺は仕事に生きるんだ。 そんな女の子は知らん」

 空とぼけるくせに、どことなく引き攣っている多田さんの口元ににすべてを理解した。

「…フラれたんですね」

「うるせぇな、仕方ないだろ! あの子は井岡の重役の娘で親が見込んだ男と結婚話が進んでるんだ。 モーションかけても無駄なんだよ」

 思わず目を瞠った。 そんな話を多田さんはどこで仕入れてきたんだろう。
 まさか、三波さん本人だってコトはないだろう?
 それとも多田さんのアプローチを断るために適当な口実でもでっち上げたのか?

「それ、信憑性のある話なんですか?」

「あぁ、この間、井岡の社員…うちの前担当者に偶然会って聞いた話だ。 井岡では誰でも知ってる話らしい」

 それはどういうコトなんだ?
 三波さんは千早のコトが好きだったんじゃないのか?
 それとも親の決めた結婚話に逆らえないで、千早のコトは諦めるつもりなんだろうか?
 それなら、と自分でも嫌になるくらい下劣な考えが頭を過る。

(もし、あの子が千早を諦めて親の決めた結婚相手を選んだら、きっと千早も…)

 あの子のコトを諦めるだろう。 多田さんがそうしたように、多分きっと。
 でも、そんな風に考える自分がどうしようもなく嫌だ。
 これじゃあ、千早の不幸を望んでるのと同じじゃないか。

(でも、それで千早が手に入るなら…)

 そう考えた直後、激しい自己嫌悪に陥った。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]