『 SLOW LOVE vol.7 』
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その後、事故車両の配送業者との折衝や、燃えた部品の再出荷やその説明の電話対応に追われた俺の仕事が終わったのは午後10時をゆうに回った頃だった。
今日一日でずいぶん消耗したコトを重怠い体で実感しながら、会社を後にする。
でも、自然に歩調が重くなるのは疲れのせいではなく、駅で待っていると言った千早のせいだ。
千早に会うのが怖くて避けていたのにあんな形で「待ってる」と言われたら断るコトもできなくて、自分の優柔不断さを呪いながらも駅に向かう。
多分、千早はもう駅にいるだろう。
やや一方的な気もしたがそれでも約束してしまったのだからと、千早には仕事の目途がついた時点でメールを送っておいた。
千早には会いたい。 だけど会うのが怖い。
相変わらず俺の気持ちは支離滅裂だ。
「はぁ…」
重い足取りに見合うため息を盛大に吐いた時だった。
「相沢っ」
いきなり背中をあり得ない力で叩かれて、前につんのめった。
マジで痛い。
「何すんですか、多田さん!」
振り返らなくても分かる。
こんな馬鹿力の持ち主は多田さんしかいないと、なんとか踏みとどまった格好のまま叫んだ。
「いじめですか? それとも今日のミスに対する罰ですか?」
「何言ってんだ。 普通に叩いただけだろ?」
あんたの普通は普通じゃない。
いい加減自分が人外並みの力を持ってるコトに気づいて欲しい。
これ以上言っても無駄なのは分かっているから、俺は気づかれないようにため息を吐いて背後にいる多田さんを振り返った。
「何か用ですか?」