だから毎年、感想文は当たり障りのないような言葉を羅列して適当に仕上げるんだけど、その俺の感想文を斜め読みして自分の感想文を書くのがルキだ。
ホントにズルイったらない。
1ページも本を読まずに、俺の感想を上手くアレンジして毎年10分足らずで感想文を仕上げてる。
しかもルキの奴は過去に2度、その俺の感想文の感想文≠ナ賞をもらってるんだから、世の中間違ってるよな、絶対。
元ネタの俺の感想文は代表にさえ選ばれたコトはないのに。
ホントに調子が良くて、要領が良くて、そのくせ誰からも好かれる――要領が悪くてわりと人見知りの俺とは、そんな所もシンメトリーだ。
「ルキ…」
思わず口からルキの名前が零れ落ちて、俺は慌てて辺りを見回したが、相変わらず図書館は俺一人だった。
そのまま、窓際の腰の高さの本棚と本棚の隙間にすっぽりと挟まるように腰を下ろす。
普段は踏み台が置いてある場所だけど、今日は何故か空いていた。
「……」
ルキが俺のベッドに潜り込んできたあの夜から、俺はルキとまともに口もきいていなければ、目も合わせていなかった。
あんなコトをされて平気で普段通りにできるほど、俺の神経は太くない。
つか、ルキの無神経さに呆れるっての。
ルキの奴は、翌朝からまるで何もなかったかのように普通に話しかけて来た。 だけど、俺はルキの顔なんて見られなかった。
話をしていないから、当然ルキが何を考えてあんなコトをしてきたのか、未だにわからないままだし。
あんなコト、兄弟でするなんて変だろう?
つか、兄弟じゃなくたってしないだろう?
なんて言うか、もっと特別な関係ならともかく…。
「特別な関係…かぁ…」
俺がルキを無視し続けるのは、あんなコトをされて戸惑ってるのと、思い出すのが恥ずかしいのと、それとは別にもう一つ理由があったりする。
それは俺がルキにしている隠し事のせいなんだよな。
好きな人がいる
たったそれだけのコトなのに俺がルキにその事実を話さないのは、俺の好きな人が男だからなんだ。
高等部の2年生でテニス部の南雲(なぐも)先輩。 それが俺の好きな人。
先輩とは一年前、ちょっとしたキッカケで知り合った――と言っても、先輩は俺のコトなんて覚えないだろうけどさ。
最初は男を好きになった自分の気持ちが自分でも信じられなくてずっと否定し続けていたけど、好きだって気持ちは日に日に大きくなるばかりで、とうとう認めるしかなくなった。
認めてしまったら気持ちは更に強くなって、気づけば用も無いのに高等部の校舎付近をうろつくまでになってしまった。
さすがにヤバいとは自分でも思うけど、先輩に会いたい…というか、姿を見たいって気持ちは抑えられない。