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□『 True Love なんて いらない 』完結7
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 それからしばらくの間、結有は模範的な大学生の生活を地で行く生活を送った。
 もっとも、結有の周りに模範的な大学生など一人もいないから、実際はどんな生活が模範的なものなのかは良く分からないのだけれど。
 それでも、遅刻せず、授業中は居眠りもせず、自主休講するコトも無く大学には通った。
 大々的に自慢したら、そんなのは当たり前だと言い返されてしまいそうなコトばかりだが、親元を離れた解放感から入学早々遊び歩いていた結有にすればすこぶる大したコトだったのだ。
 おまけに夜遊びだって行っていない。
 夜は家で一人のんびり過ごす日々が続いている。
 一人で過ごす時間も、太一のコトはできるだけ考えないようにした。
 というよりも、考えてもどうにもならないコトなのは分かっているから、思い出さずにこのまま忘れて行くしかないのだろう。
 そうして家で大人しくしているその間もお誘いメールは何件か来たが、なんとなく遊びに行く気分にはならず総て断った。
 洋介からの「セイさんも心配してるよ」というメールには多少 心がぐらついたが、ここしばらく太一以上に結有の頭を占めているコトが原因で結局それも返信はしなかった。

(祥悟さんと顔合わせづらい…)

 宵待草に行けば祥悟と顔を合わせる確率は非常に高いわけで、それが結有を躊躇わせていた。
 祥悟とのコトを後悔している訳ではない結有だが、あんなコトのあった後ではやはり会うのは恥ずかしい。
 どんな顔で祥悟に会えばいいのか分からない。
 そのせいで足は自然と宵待草から遠ざかってしまう。
 そうして今日も、結有は最後の一般教養の講義が終了するとともに家路につこうと大学の正門へ向かった。
 途中、掲示板を眺めていた時に選択科目で顔を合わせる友人達と出くわし、合コンに誘われた。

「悪ぃ、今 金欠なんだよね。 また誘って?」

 合コンや飲みの誘いを断るのは、この手が一番いい。
 角も立たないし、痛くもない腹を探られる心配がないからだ。
 合コンなんて誘われたら大抵の友人は二つ返事でOKするから、無下に断ると彼女ができたのではないかと探りを入れられる。
 結有の場合は恋愛対象が男であるという絶対に探られたくない痛い所があるだけに、行きたくないという理由で邪険にするコトはできない。
 だから何回かに一度の割合で参加するのだが、どう考えても時間と金の無駄遣いにしか思えない。
 これも社会生活を送る上で必要な忍耐と経費だと考えながらも、どこか割り切れないものを感じてしまう。
 だから金欠≠ニ言って断るのが最良だと気づいてからは、合コンにおける忍耐と必要経費はかなり削減されたと思う。

(ゲイの合コンなら考えないでもないんだけどな)

 そう考えて、思わず失笑する。
 ゲイの合コンなんて、そんなまどろっこしいものあるわけがない。
 少なくとも結有の周りのゲイ友達は、もっと即物的で行動的だ。 ハッテン場へ行くなり、そういった店で相手を探す。
 
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