気持ちは伝えられた。 それだけで十分だ。
だから、一瞬だけ独り占めした折口の感触を忘れる頃には きっとただの友達に戻れると、自分の中で恋心を完結させた。
それなのに折口は俺の言葉を、呆れたような顔で一蹴した。
「お前、何を言ってんだ?」
僅かに眉根を寄せた折口の言い草に、ついお前の方こそ何を聞いてたんだよ≠ニ言いそうになった。 でも、少なくとも友達のままではいたかったから、そこはグッと堪える。
ホントはこんなコト何度も言いたくはないけど、気持ちにケリをつけるためにはちゃんとしておこうと思ったから、俺の決心をもう一度口にした。
「だから、ずっと折口と川瀬のコトを認めたくなくて逃げ回ってたけど、もう折口のコトを諦める決心が着いたから――」
「お前はバカか? 俺のコトが好きだって認めた直後になんで諦めるなんて言うんだよ」
いきなり言葉を遮られてのバカ呼ばわりに、思わずムッとして言い返してしまった。
「お前こそバカだろ! 諦めるしかないからそう言ってんのに! 俺はお前と川瀬が――」
「川瀬のコトは、園田の勘違いだ」
あまりにもサラリと言い切った折口に、言葉を失った。
勘違い?
勘違いって何だよ?
またしても言葉を遮られた上に、俺がとんでもない誤解をしているような言い方に、今度はこっちの眉根が寄った。
勘違いするようなコトなんて何もないじゃないか。
おとつい、現場を依田と一緒に目撃して、それから俺がどれほど悩んだのか折口は少しも判っていないんだ。
折口が好きなのに、それを認めたくなくて気づかないフリを続けて、その結果 折口が川瀬とつき合うキッカケまで作ってしまったコトをどれほど後悔したか。
「俺は川瀬とつき合ってなんかない」
次いで発せられた折口の言い訳にもならないような言葉に、腹が立つのと同時に悲しくなった。
川瀬とつき合ってないなんて、どうしてそんな嘘を吐くのか判らない。
「嘘ならもう少しマシな嘘を吐けよ。 俺、見てたんだぞ」
どうしようもなく泣きそうな気持ちでそう言うと、折口の呆れ顔は酷く真面目な顔に変わって俺に向けられた。