どれもしっくり来なくて、またため息を吐いた。
今日、折口に会ったら昨日のコトを謝ろうか?
でも、一体何を謝ればいいんだ?
折口のコト嫌ってなんかいない、とでも言えばいいのか?
いや、自分の気持ちも判らないのに、そんな無責任な言葉言えるワケない。
確かに、折口のコトは嫌いじゃない。 でも、俺の好きと折口の好きは意味が違うから、うかつに好きだとか嫌いだとか言うべきじゃないと思う。
「違うな、それより先に謝らないといけないコトがあるんだ」
思い出した。
俺は、折口に川野の気持ちに応えてやれって言ったんだ。
折口の気持ちが川野になんて向いてないコトを知っていたのに、そう言った。
俺が折口に真っ先に謝らないといけないのは、そのコトだ。
川野が折口を好きだからという理由で二人がつき合えるんなら、同じことが俺にも言えるはずなのに。
折口が俺を好きだから、俺達がつき合えるというのと同じ理屈だ。
そんなコトが簡単にできるほど折口も俺と同様に器用じゃないと判っていたのに、俺は自分にできないコトを折口にやれと言ってしまったんだ。
そのことだけは、どうしても謝らないといけないと思った。
「ちーッス」
部室にはすでに半数以上の部員がいて着替えたりの準備をしていたけど、その中に折口の姿は無かった。
この時間ならいつもは来ているはずなのに、と僅かな不安が頭を過ったけど、いきなり肩を叩かれてそれ以上考えるコトができなくなった。
「ウッス、園田。 昨日は悪かったな。 顔、大丈夫か?」
「依田…あぁ、もう何ともないから、んな気にすんなよ」
俺の方はそれどころじゃなくて、もうすっかり忘れていたのに依田はまだ気にしていたらしい。
そのまま依田と一緒に体育館へ行った。
先に来ていた奴らとネットや支柱を体育倉庫から運び出したりと練習の準備をする間も折口は姿を見せなかった。
そのうち、先輩達が体育館へやって来ても折口は来ない。
もしかして今日は休みなのかと思いながら、部長が掛けた集合の合図に歩き出した時、やっと折口が現れた。
休みじゃなかったと判ってホッとした。
昨日の今日で休まれたら、やっぱ俺のせいだって思っちゃうだろ。
珍しく遅刻ギリギリの折口に、部長が一言だけお小言を言い練習が始まった。