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□『 True Love なんて いらない 』完結6
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 けれど結有の細い下肢を包んでいたスキニーは容易に脱がすコトはできなかったようで膝の辺りでまとまって引っかかる。
 気づいた結有がそこから足を引き抜こうと体を起こしかけた時、それを祥悟に制された。
 祥悟の手に軽く押された結有の体が再びベッドに倒れ込み、柔らかなそこに僅かに沈む。
 その体のちょうどデニムのひっかかった辺りを膝立ちで跨ぐと、祥悟は無言のままに結有を見下ろす。

「?」

 何をしてるんだろうと、結有は訝しむ。
 抱いてくれると、忘れさせてくれると言ったのに、祥悟は身動き一つせずにただ見つめてくるだけだ。
 何もしてくれない祥悟に焦れた結有が体を起こそうとした時、ふと祥悟の視線に気づいた。
 祥悟の目は明らかな欲情を示している。
 欲の孕んだ目で、結有の体を見つめていたのだ。
 気づいた途端、先程までは露ほども感じていなかった激しい羞恥に襲われた。
 祥悟の視線の先がどこなのか、想像すると恥かしさで顔が赤らむ。
 ついさっき「めちゃくちゃにして」などと口走っておきながら、今は羞恥に震える自分の支離滅裂さにも戸惑うが、何もしないでただ結有を見つめるだけの祥悟の行動にはもっと戸惑う。
 耐え切れずに結有は小声で言った。

「…そんな…見ないでよ…」

「何で? 俺の好きにしていいんだろ?」

 意地の悪い言葉に、自分で言い出したコトとはいえ居たたまれなさを感じる。
 確かに好きにしていいとは言った。
 でもそれは好きに抱いていいという意味で、こんな恥かしいコトは望んでいない。
 けれど、これが祥悟の抱き方だと言うのなら、結有に文句は付けられない。

「恥ずかしい?」

 当たり前のコトをわざわざ聞いてくる祥悟に腹が立つ。
 だから敢えて返事をせずに、そっぽを向いた。
 
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