夢だと気づいて、甘く幸せな気分はものすごい早さで引いていく。
残されたのは、全部 夢だと言うのに妙にリアルな息苦しさだけだった。
何で苦しいのだけは醒めないんだろう?
胸を締め付けるような、この息苦しさも夢なんじゃなかったのか?
そう思った時、ようやく気づいた。
俺の体に絡まっている、見慣れた細い手足に…。
「ルキっ!」
こいつ、また俺のベッドに潜り込んでる。
ギュウギュウ締め付けてくるルキの腕と足から逃れた俺は、背中に張り付くように添い寝していたルキを揺さぶり起こした。
「…っだよ、せっかく人が良い夢見てたのに…」
それは俺のセリフだよ。
大あくびをしながら俺を見上げるルキに ものすごく腹が立ったのは、九割九分九厘、願望そのものの夢の邪魔をされたせいだ。
「なんで、また俺のベッドにいるんだよ?」
「えー? 別にいつものコトだろ?」
確かにそうだけど、いつものコトだけど、それでも今日は許せない。
あんな夢、もう二度と見られないかもしないのに。
それでも、もしかしたら、今すぐ寝れば、夢の続きが見られるかもしれないという淡い期待を抱きながら、ルキをベッドから追い出そうと力一杯押す。
「わっ! ちょ、押すな。 落ちるだろ?」
「うるさいっ! 早く自分の部屋に戻れよ」
「何をムキになってるんだよ?」
ベッドから落ちるまいと必死に抵抗するルキを突き落そうと、渾身の力を籠める。
早くしないと夢の続きが見られなくなる。