Novel Library 3

□『 Symmetry 』 vol. 1
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 半年前 家のリフォームをした時に、それまで一部屋に押し込まれていたルキと俺にそれぞれの部屋ができた。
 もっとも幼い頃からのくせで、その後も同じベッドで寝起きしたりしてたからお互い個室があるって感じもしないのだけど。
 朝起きたら、別の部屋で寝てたはずのルキが隣にいたなんてコトは日常茶飯事だし。

「なぁ、ユキアレ≠煖vしくしてないよな?」

 アレ≠ニ言われても すぐには思い至らなかったけど、クスッと笑ったルキの顔を見て理解した。
 確かに最近した覚えはない。

「久しぶりにしよっか」

 俺の返事を聞く前にルキが近づき、小さな音を立てて唇にキスされた。
 スキンシップ過多の両親に育てられたせいで、俺達にとってキスなんて挨拶みたいなものだ。
 それこそ幼い頃は兄貴とだってしてたし、双子の俺達がキスなんかすると周りの大人たちは仔犬や仔猫のじゃれ合いと同列の愛らしさを感じるらしく、かなりウケていたのを覚えてる。
 「可愛い」と大人たちが喜ぶのを見て、調子に乗っていたアホな子供だったと今は思う。
 それでも俺とルキの間では、回数こそ減ったもののキスのスキンシップは続いている。

「ユキ…」

 呼ばれて閉じていた瞼を上げると、間近に鏡を見るみたいに俺とそっくりなルキの顔があった。

「ユキの唇…熱いな」

 それはルキも一緒だ。
 湯温はぬるめに設定したけど、体はもう十分に温まってる。
 ふと見ると、俺より長いルキの髪は湯に濡れていて、毛先から滴が落ちている。
 双子の宿命とでもいうのか、俺達は物心つく前から、と言うより生まれた時から何でもお揃いで身を固められていた。
 それこそ頭の上から足の先までお揃いで、違うと言えばせいぜい色くらいのものだった。
 それが当たり前で育ったから何の不満も感じたコトはなかったけど、ある日突然 ルキはお揃いを着なくなった。
 服は自分で買いに行くようになり、それまで寸分違わぬものだった髪型も変え、そのために俺達は一見して双子だと気づかれるコトは少なくなった。
 もっとも同じ顔をしているのだから、よく見ればすぐに双子だと分かってしまうのだけれど。
 どうしてルキが習慣のようになっていたお揃いを止めたのか、俺なりに考えてみたコトもある。
 多分ルキは俺と1セットで括られるのが嫌になったんだろう。
 双子でも、それぞれは別の人間なんだから何でもかんでも一括りにされるのが納得できないのは俺も分かる。
 
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