Novel Library 3

□『 Symmetry 』 vol. 1
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 名前は、兄の俺が優輝(ゆうき)で、こいつは流輝(りゅうき)。
 幼児だった頃、流輝の名前を上手く発音できなかった俺が「るうき」と呼んでいたのを面白がった両親と兄貴が流輝のコトを「ルキ」と呼ぶようになり、次いで俺の名前は「ゆうき」が詰まって「ユキ」と呼ばれるようになった。
 その呼び名は、今では家族どころか友人知人すべてに浸透していて、俺達自身もご多分に洩れずなワケだったりする。
 俺とルキはDNAがまったく同じなだけあって顔も背格好もそっくりだけど、性格とか好みとかは意外と違ったりする。
 それでも、やっぱり考えてることが同じだったりするし、普通の兄弟よりは仲はいい方だと思う。
 というか小さい頃はベッタリ一緒で、どこに行くにも何をするにも二人だった。
 成長して来てそれなりに別行動も増えたけど仲が良いのは変わらないし、兄貴には「お前ら二人の間には絶対入れない」と言われる。
 俺達としては、そこまで極端なつもりはないけど、傍から見るとそう見えるらしい。
 それにしても、せっかく一番風呂にのんびり入ろうと思ってたのに、流輝と一緒だと少し狭くなりそうだと思わずため息が漏れた。

「ユキ、ちょっと寄れよ」

 俺のガッカリ感なんてお構いなしのルキは、言うなりいきなりバスタブに飛び込んで来た。
 乳白色の湯が大きく波立って、顎まで浸かっていた俺は溺れそうになる。
 風呂場で溺死なんてしたくない。

「ちょっ、ルキ! もっと静かに入れよ。 つか、体くらい洗ってから入れ」

「ちゃんとシャワーで流したじゃん」

 悪びれもせずにルキは肩を竦めた。

「ユキと風呂入るの、久しぶりだよな?」

 ルキの体積分深さの増したバスタブの中で少し体を起こした俺に、ルキが笑いかける。
 言われてみればそうだ。
 昨年までは割と一緒に入ってたのに、いつの間にか別々に入るようになっていた。
 二人で一緒に入らなくなった理由はこれと言って無いけれど、やっぱり1中三ともなると一人の方が都合がいいコトもいろいろあるわけで…。

「そうだな、確かに久しぶりだよな。 いつ頃から一緒に入ってなかったっけ?」

「多分、部屋が別々になった頃からじゃないか?」

 そうなると、もう半年も一緒に入っていなかったってコトになる。
 
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