Novel Library 3

□『 Symmetry 』 vol. 1
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『 Symmetry 』 vol.1


 バスタブに四角いラムネ菓子のようなバスキューブを放り込むと、湯を手でぐるぐるとかき混ぜる。
 底に沈んだバスキューブが溶け出し、透明な湯は見る見るうちに乳白色に変わって行く。
 浴室にはオレンジの香りが広がった。
 子供の頃から入浴剤を入れた風呂が大好きで、それは中学生になった今も変わらない。
 バスタブに浸かって手足を伸ばすと、思わずため息が出る。
 一番風呂は久しぶりだ。
 要領が悪い俺は、いつも兄貴や弟の流輝(りゅうき)に先を越され、風呂の順番が後になる。
 でも今日は父さんも母さんも仕事で遅いし、大学生の兄貴は合コンだとか言っていたから、こっちも帰りは遅いんだろう。
 だから流輝が部屋へ戻ったのを見計らって、声も掛けずに風呂に入った。

「あ〜、やっぱ一番風呂はいいわ」

 弱冠14歳で この風呂好きはオヤジくさいと家族みんなに言われるけど、好きな物は好きなんだから仕方ない。
 ズルズルと湯に沈み込み、顎まで浸かってもう一度ため息を吐いた時、いきなり浴室のドアが開いた。

「ルキ?」

「あれ? ユキ、入ってたんだ?」

 入ってたも何も、電気が点いてるんだから分かるだろうと思いながら、入る気満々の格好で扉の所に立つルキを見上げた。

「入ってたら悪いのかよ?」

「悪かないけど、それなら声掛けてから入れよ。 つか、今更また服着るの面倒だから、このまま俺も入るぞ?」

 俺の返事も聞かずにシャワーのコックを捻ったルキに呆れる。
 最初から、俺の意見なんて聞く気は無いんだ。

「…別にいいけどさ」

 そう答えて、勢いよくシャワーを浴びる俺とそっくりの顔をしたルキの背中を眺めた。
 ルキは俺の一卵性の双子の弟だ。
 
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