【 後編 】
「ちょっと頭冷やしてくるわ」
園田の返事も聞かずにベンチから離れて、少し先にある自販機に向かう。
水分補給でもしたら多少は頭が冷えるかと思ったからだ。
「やべぇなぁ…俺、マジで余裕無いわ」
嫉妬にしても園田に当たるなんて筋違いだ。
岩井先輩が園田に気があるってコトは間違いないけど、もう少し園田を信じるべきだったのかもしれない。
でも正直言って自信が無いんだ。
俺は園田のコト本気で好きだけど、園田の好きとは微妙なズレを感じる時があるから。
アイツは俺の気持ちに引きずられてるだけなのかもしれない。 そんな思いが捨てきれなくて、その自信の無さが過剰な嫉妬心を産みだしてるんだろう。
もっともこんな自信の無い俺の姿は園田には絶対見せたりしないけどな。 でも…
「こんなの初めてで、どうしたらいいのか分かんねぇ」
誰かを好き過ぎて嫉妬でおかしくなりそうなんてコト初めての経験で、自分の中のドス黒い感情に振り回されっぱなしだ。
自販機でコーラを2本買った時、制服の尻ポケットに入れたケータイからメール着信音が聞こえた。
片手でフリップを開くとディスプレイに表示されたのは沖の名前だった。
『園田クン、チョー可愛くて気に入った。 今度3人で遊び行こうな。ちなみにダチの男に手ェ出すほど不自由してないから安心しろ。 園田クン、練習中もモップかけてッ時も ずっと折口のコト見つめてたぜ。 この幸せ者』
最後はニヤリと笑った顔文字で締め括られていたメールを読んで、あの時どうして沖が園田を見つけ出せたのか、ようやく理解できた。
俺が園田を見てたように、園田も俺を見てたなんて。
そんなコト、全然 気づかなかった。
ケータイを閉じるのももどかしく思いながら、園田の元に走って戻る。
俺はバカだ。 大バカだ。 園田の気持ちまで疑うなんて。
俺と園田の気持ちに大きな差があったとしたって、そんなコトはどうでもいいことだったのに。
例え園田の気持ちが俺の気持ちの10分の1しか無かったとしても、園田は俺に答えてくれた。 それだけで十分じゃないか。
「園田っ!」
呼ばれて振り返った園田の顔を見た途端、愛しさに胸が締め付けられるように痛んでそのままベンチの前に回り込むと思いっ切り園田を抱きしめた。
「ごめん、俺が間違ってた。 もっと園田のコト信んじなきゃいけなかったのに」