恥ずかしさから逃げたくて意識をどこか別のところへ働かせようとしたのに、そんな僕を咎めるみたいに体の中を撫でる指が増やされた。
「…う、んぅ」
途端に強くなる圧迫感に、つい身を捩ってそれから逃げようとしてしまう。
決して拒否したわけじゃないのに、先輩の指はずるりと僕の中から抜け出てしまった。
直後、先輩の体が僕から離れるのを感じた。
無意識の行動だったのに、嫌がってると思われたのかもしれない。
ひょっとして怒らせちゃった?
すぐにでも誤解を解きたかったけど、先輩の顔を見るのは恥ずかしくて僕は何も言えずに顔をかくしたままだった。
「真史?」
動けないままでいた僕の上から先輩の声が降ってくる。
それはすごく優しげな声で、明らかに僕のコトを気遣っている、そんな声だった。
怒らせたわけじゃないと分かってホッとしたけど、やっぱり僕は何も言えなくてただ先輩の呼びかけに小さく頷くのが精一杯だ。
「真史、ごめん。ちょっとだけ我慢して」
不意に告げられた言葉に、何?と聞き返す間もなく、いきなり奥に冷たい物を感じる。
「や、何?」
驚いた僕の声に、先輩は僕の髪を撫でながら囁いた。すぐそばに先輩を感じる。
「ローション。これで少しは楽になると思うけど…」
「ロー…ション? 何でそんなの持って…」
想像もしていなかった物の名前を出されて、それが常備されていた事実に戸惑った。
もしかしたら先輩は僕が思ってる以上に、いろいろ経験してるのかもしれない。そんな思いが過る。
「言っただろ?」
先輩の言葉が、キスと一緒におでこに降りてきた。
「我慢してたって。でも真史のコト抱きたかったから、いつかこんな日が来たらって準備だけはしておいたんだ」
照れくさそうな先輩の声を聞いて、思わず閉じていた目を開いた。
それ…ホントに?
先輩、そこまで僕のコト抱きたいって思っててくれたの?