ところが、ある日突然あれだけ頻繁にあった電話もメールも一切無くなり、まったくの音信不通の一週間を経て今日いきなり呼び出された。
そして音信不通の言い訳も謝罪も無いままに、会うなりいきなり3回立て続けのセックスのあと、何の前置きも無く冒頭の会話となったのだ。
「ちょっと、待て…好きな奴ができて? これからは、そいつ一筋? つか…たった今 俺と3回もやっといて、何が一筋? テメ、ふざけんじゃねーぞ! 人をなんだと思ってんだっ」
太一の奔放ぶりは良く知っているつもりだったが、さすがに結有もこの発言にはキレた。
あまりの身勝手さに、隣で寝ころがったままの太一の顔面を枕で力一杯殴ってやった。
それをモノともせず、太一は枕を結有から取り上げると起き上がり結有の体を抱き寄せた。
「結有は世界中で一番 体の相性のいーやり友だよ。だろ?」
確かに太一のいう通りだ。 だからってやるコトをやった後にこんな告白はズルイじゃないかと結有は思った。
そんな風に言われたら、やり友の立場の自分には太一の新しい恋を認めるしかないのだから。
「なるほど…俺がそういう位置づけだったのは理解した。 じゃあ何か? その体の相性バツグンの俺以上にセックスの合う男と出会ったと、そういうコトなのか?」
少し嫌味を交えて太一に向かって言い放ったものの、太一から返された答えに結有は言葉を失った。
「それはまだ分んねぇ。 だって、そいつとはまだヤってないから」
「……」
手の早い太一の言葉とは思えなかった。
結有の知る限り、周囲にいるゲイだと公言している連中は皆 揃って身持ちが緩い。
これは結有の周りに限ってのコトではないのかもしれないが、元々 絶対数が少ないうえに知り合う機会も少ない。
その中で見た目や性格だけじゃなくセックスの相性まで良い相手なんて そうそう出会えるはずもなく、皆 機会があったら試していこうと考える。
もちろん中には身持ちの固いゲイもいるだろうけれど、結有の周りは皆 行動が迅速な者ばかりだった。
その中でも筆頭級の太一が、まだ一度もセックスしていない相手とステディ宣言をするコトが結有には信じられなかった。
「なぁ、太一の相手って、俺の知ってる奴?」
狭い世間の中の、さらに狭いマイノリティの自分達だから太一の相手が知っている人間である可能性も十分にあると結有は思った。