でも、それは意識して変えてるわけじゃない。
フラれる度に美容院に駆け込んでるだけだ。
俺をフッた男を忘れるために…。
そんな俺の乙女な行動を女子社員がチェックしてるとは思わなかった。
思わず視線を下に落とす。
とても真実は言えない。
ともあれ、本当のコトさえバレなければ、女子達には受けがいいようだから良しとしよう。
「おいおい、課長がいないからって あんま油売ってんなよぉ」
いきなり女子社員の輪を崩すように入り込んで来たのは、先輩社員の多田さんだった。
「相沢、お前また髪型変えたんだな? つか、そろそろじゃないかと思ってたんだけどさ」
主任の多田さんに注意された女子社員が三々五々デスクに戻るのを眺めながら、多田さんは俺のデスクに腰かけた。
その顔がニヤついている。
「多田さん、そろそろって、どういう意味っスか!」
「言葉通りの意味。 どうせ、またフラれたんだろ?」
多田さんは、俺が髪型を変える理由を知ってる。
以前、飲みに行った時、酔いに任せて話してしまったからだ。
もっとも、相手が男だというコトは言ってないけど。
「なーんで、そんなにサイクル早いかなぁ? あ、もしかしてお前インポなんじゃね? できないのがバレるとフラれるんだろ? 青いお薬飲んでみたら?」
「もう、勝手に言ってて下さいよ」
実際は その逆でヤリ過ぎて飽きられてるなんて、例え相手の性別を隠したとしても言える訳はない。
「知り合いに内科医いるから、紹介してやるぞ?」
「いりませんよ。 つか、何か用事っスか?」
「別にぃ、お前をからかいに来ただけ」